名前の呼び方




神様かみさまじんくん?」


みぃは僕の膝の上でそう言うと、うーんと首を傾げる。

そんな動作もいちいち可愛い。


「どうしたの?みぃ」

「呼び方、どっちもいい……」

「ああ、どっちで呼ぶか迷ってるの?」


僕がそう尋ねると、みぃはこくりと頷く。

うーん。別にどっちで呼ばれてもいいんだけどなぁ……


「っていうか、急にどうしたの?」

「さっきテレビで『彼氏を苗字じゃなくて名前で呼びたい』っていうシーンがあって」

「それで呼び方を考えてたの?」

「そう」


みぃは意外とそういうのに影響受けやすいからなぁ……

まあ、本人が好きなように呼んでくれればいいんだけど。


「みぃが呼びやすい方で呼んでくれていいよ。それが一番だから」

「そう言われても、悩む。うーん……どっちも捨てがたいし……」

「今すぐ決めなくてもいいんじゃない?色々な呼び方してみれば」

「そっか。その手があった……そうする」


みぃはそう言うと、やけに上機嫌でテレビに視線を戻す。

僕もそのテレビの方に視線を向けると、丁度ドラマが終わってニュースが始まるところだった。

へえ、また不正発覚とか、大変だなぁ。

高校三年になったら選挙権あるんだもんな。いつまでもよくわかりませんって態度じゃダメだよなぁ。


「ねえ、神様?」

「なに?みぃ」

「呼んでみただけ」


みぃはそう言うと、くすくすと楽しそうに笑う。


「神くん?」

「なに?美彩」

「ふふっ。ねえ、王子様」

「どうされましたか?姫様」

「ふふっ」


みぃは少し顔を赤くしてそう笑うと、くるりと体の向きを変えて僕に抱きついてくる。


「ねえ、愛しの人ダーリン

「その呼び方、夫婦みたいだね」

「でしょ?でも、学校だと恥ずかしいかも。あ、旦那様っていうのもあった」

「まだ結婚してないよ?」

「ボクと将来結婚してくれるんでしょ?」

「安定した収入の為に真面目に勉強中です」

「最低限のお金があればいいかな。神様がいるだけで十分」


みぃはそう言いながら恥ずかしくなったのか、僕の胸に額を押し付けてくる。

僕はそんなみぃを抱きしめると、その髪に息をふぅっとかけてみる。


「うひゃ!?」

「ふふっ。みぃ、どうかした?」

「ふ、ふーってしたでしょ!」

「したかもね」

「くすぐったかった!」


変な声を出したことがよほど恥ずかしかったのか、頬を膨らませて抗議するみぃ。

これ以上すると歯止めが利かなくなりそうだから、これ以上はやめておこう。

大人になれば、いくらでもチャンスあるし。



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