本編
シーン1
スマホのアラームに起こされて、僕の1日は始まる。
眠気覚ましに顔を洗って、洗濯機を回して、朝食と二人分のお弁当を作って、着替える。
コーヒーを作るのも忘れない。
それから僕は、まだ今日一度も開けていない扉を数回ノックする。
返事がないのはいつものことなので、気にせずに部屋の中に入る。
すると、そこはシンプルだけど可愛い小物がいたるところに置いてある、僕の幼馴染兼同居人の部屋になっている。
僕は、布団で丸くなって寝ている幼馴染兼同居人を見る。
短く切られた茶色くてサラサラな髪の毛に、ニキビもシミもない白い肌をもつ美少女、
まだ高校に入って数ヶ月だと言うのに、校内一の美少女と呼ばれている。
小さい頃はいじめの対象だった茶色い髪も、白い肌も、高校に入れば美少女を形作るパーツだと見られてしまう。
「みぃ。ほら起きて。朝だよ」
みぃというのは昔からの癖だ。
美彩だから、みぃ。まんまだけど、幼稚園生が考えたのだから許してほしい。
「……かみさま?」
体を起こし、焦点の合わない目で僕を見るみぃは、こてんと首を傾げながらそう呟く。
何故か幼稚園の頃からみぃにはこう呼ばれている。
何故そう呼ぶのか疑問に思って聞いていたところ、『雰囲気が神様みたい』ということを言われた。
「うん。もう朝だから、ご飯食べよう。今日は、フレンチトーストだよ。好きでしょ?」
「うんっ!」
そう言って笑う顔は、眠いときにしか見れないレアな顔だ。
目が覚めているときは、表情に変化があまりない……らしい。十年以上一緒に遊んでる僕からすれば、結構表情が変わっているように見えるのだけど。
でも、ここまで無防備な顔を見れるのは、眠いときしかない。
「じゃ、ご飯食べに行こう」
僕がそう言うと、みぃはもそもそとベッドから出て、少しふらつきながら立ち上がる。
そんなみぃの手を取ると、急ぎ足にならないようにしながら部屋を出る。
まだぼんやりしているみぃを椅子に座らせると、朝食を二つテーブルの上に並べ、みぃの右隣に座る。
これも、いつものこと。
みぃは小さな声で「いただきます」と呟くと、ゆっくりとフレンチトーストを食べ始める。
僕も「いただきます」と呟くと、みぃとペースを合わせて食べ進める。
ゆったりとした朝食が終わっても、まだみぃはぼんやりしている。
「ほら、歯磨きとかしないと」
僕がそう言うと、みぃは少しの間僕の顔を見た後、ゆっくりとした動作で洗面所に向かう。
僕もみぃに続いて洗面所に行くと、洗い終わった洗濯物を洗濯機から籠に移す。
スマホで見たところ、今日は晴れるみたいだから、外に干す。
二人分なのでそんなに量はないけど、干すのには気を使う。
みぃの洗濯物も入っているからだ。
正直、下着とかを触るのは恥ずかしいところがあるけれど、しっかり干さないとシワになったりするので、そこは我慢している。
洗濯物を干し終わって中に入ると、みぃは自分の部屋で着替えをしていた。
僕はその隙に歯を磨いて、トイレを済ませる。
トイレから出て手を洗い終わったタイミングで、みぃが外に出てきた。
水色のパーカーワンピは、この前二人で買い物に行ったときに買ったものだ。
こういう可愛い服を着ているところを見ると、私服の高校で良かったと思う。
「……どう?」
「うん。似合ってる。かわいい」
少し赤い顔で僕に尋ねてくるみぃにそう返すと、何故か嬉しそうに頷いて小さくガッツポーズ。
こうして、僕の朝の時間は過ぎて行く。
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