杉と燕とヴァニュハルと
増田朋美
第一章 奇妙な音楽
杉と燕とヴァニュハルと
第一章 奇妙な音楽
文化会館。富士市三曲協会定期演奏会が行われている。
三曲とは、箏、三味線、尺八を使った音楽の事。まあ、言ってみれば、富士市内のお箏教室が、一堂に会して行う、発表会である。
演奏曲は、春の海、六段の調べ、千鳥の曲などである。
どの社中(邦楽教室の事)も、皆高齢化しており、正確にリズムを刻んだり、正確に歌を歌ったりする社中はなかなかない。ある意味邦楽というものはそういうものなのかもしれないが。お客さんたちも、身内が箏を習っているから仕方なく見に来ているという感じで、誰も出演者に敬意を表すものはなく、中には大いびきをかいて寝ている人も少なくない。そして、もらえる拍手も、洋楽に比べたら比較にならないほど少ない。
そんな中杉三だけは懸命に拍手する。
蘭「杉ちゃんは、どうしてこんな退屈な音楽に興奮するんだよ。」
杉三「当り前じゃないか。日本の貴重な音楽だもの。拍手しないでどうするの。」
蘭「そうだけど、どの曲も前歌、手事、あと歌でおしまいでしょう。いつも同じワンパターンだし、内容は寂しい気持ちを歌ったものばかりだし、歌詞も何を言っているかわからないし、もう退屈でしょうがないよ。」
杉三「そのワンパターンというものが日本というもんだぜ。」
蘭「僕は、どうしても理解できないなあ、、、。」
と、次の曲内容を紹介するアナウンス。
アナウンス「続きまして、水野麗華社中、「麗の会」の演奏でございます。今回は水野麗華先生自らが作曲された作品でございまして、これまでの箏曲とは一風違った変わったものになっております。曲は、桃の花でございます。それではお聞きください。」
蘭「どうせ、女の人が描いたものであっても、ワンパターンなんだろうな。」
杉三「どうもやな予感、、、。」
蘭「まあ、黙って聞こう。」
舞台の照明が明るくなり、10人の箏演奏者が登場する。みな着物を着用していて、それまでの社中とあまり変わらない。
彼女たちは箏の前に立って最敬礼する。期待を示さない拍手が起きる。
社中の主宰者、水野麗華が、座るように促すと、彼女たちは堂々と箏の前に座る。その態度は、他の自信のなさそうな態度とは全く違う。麗華が、首席奏者の席に座って、軽く頷くと、彼女たちは、箏に手をかける。すると、いきなり機関銃のような不協和音が流れ始めて、一気に爆弾の雨のような十六分音符の連続。
おおっとどよめく聴衆。その爆弾の雨のような音に、寝ているひとも目を覚まし、何事かと周りを見渡す。
杉三「ひどい。ひどいよ。箏をこれでは馬鹿にしているだろう。ショスタコーヴィチでさえも、ここまで酷い曲は書かないよ。これでは、まるで戦争映画だ。」
隣の席で、開いた口がふさがらないという顔をして、聞いているおばあさんを、杉三は同情するという目で見つめる。
意外にも大曲で、17分ほどかかってしまった。最後にがけ崩れのようなフィナーレで曲は終わる。
一瞬ぽかんとする聴衆であったが、割れんばかりの大拍手になる。
蘭「やっと終わった。疲れたねえ。」
杉三「あんなのが、流行りだしたら邦楽はおしまいだ!」
その後、三つの社中が演奏したが、彼女たちに匹敵する大拍手を提供した者は、誰もいなかった。
蘭「さて、帰ろうか。杉ちゃん。」
杉三「あれ、結果発表は?」
蘭「いや、もう疲れたよ!」
杉三「僕は結果を知りたいな。」
蘭「半分わかっているようなものさ。」
杉三「いや、どうかな。審査員がどう判断を下すか。」
蘭「それ聞いてどうするんだよ。」
杉三「審査員の頭も正常かなと思って、、、。」
アナウンス「それではただいまより、結果発表に移ります。まず、今回の演奏について、講評をいただきます。」
蘭「あーあ、とうとう始まっちゃった。」
杉三「いいじゃん、最後まで聞こう。」
富士市長が、講評を読み上げる。その中で、麗華の団体のことは一言も触れていない。
アナウンス「続きまして、結果発表に移ります。呼ばれた団体の代表の方は、舞台にお越しください。」
市長「第三位、しょうぶ会、第二位、横山会、第一位、花の会の皆さんです。」
つまり、麗の会は、入賞しなかった。
市長「審査員特別賞は、無限の会の皆さんでした。」
審査員特別賞すらも入らなかった。
杉三「あ、よかった。市長さん、君の頭は正常だよ。ああいう気持ち悪い曲をやる会を、一位に仕立て上げなくて本当に良かった。無限の会を特別賞にしてしまうのもえこひいきだと言われるかもしれないが。」
無限の会は、麗の会の前に演奏した団体のことで、古典箏曲を大切にすることで有名である。
隣の席に座ったおばあさんが話しかける。
おばあさん「これからは、古典というものは、ああいう事情のある会じゃないとやってくれない可能性もあるかもね。」
蘭「どういう事ですか?古典は強制的にやらされるもんだと思うけど?」
杉三「あ、無理無理!これからは、ああいうおかしなものの方がはやるのは疑いない。確かに言う通りかもしれないよ。無限の会のような訳ありの会でないと、古典の美しさは理解できない時代もそう遠くないかもしれないよね。あーあ、こうなると、日本の箏曲はどこへ行くのかなあ。」
おばあさん「市長さんが、水野さんのようなところを、一位に選ばなくて本当に良かったわ。」
杉三「必ずそれも崩れますね。舞台を見ればわかる。」
舞台では、一位を受賞した団体にインタビューが行われたりしているのだが、聴衆はこの結果に不服だったのだろう。次々に帰り支度を始めてしまっている。
杉三「ひどいもんだ。せめて、一位の人の話くらい聞いてから帰れ。」
蘭「それは、杉ちゃんが、変わり者すぎるだけだと思う。」
杉三「なんでだ?だって、古典が嫌いなんて、日本人だったらまずありえない話だぜ。だって、ドイツ人でベートーベンを尊敬しない人はまずないのに、なんで日本では自国の音楽を知らなすぎる人がこんなに多いのだろうか。」
蘭「まあねえ、、、。ちょっと僕には相手ができないや。青柳教授に聞いてみな。」
そのうち、一位の団体にトロフィーが渡され、次の演奏会の日程が発表されて、大会はお開きになる。
待ってましたとばかり、かえっていく客たち。
蘭「さて、わからないこと言わないで帰ろう。」
杉三「はいよ。まあ、来年以降、あのおかしな曲がもう一回演奏されるのであれば、もう、演奏も見に来れないなあ、、、。ショスタコは、お箏の世界の作曲家ではないぜ。」
おばあさん「本当ねえ。あなたたちのような人が、本当はもっと増えてくれたら、皆喜ぶんだろうけど。」
杉三「まあ、僕は馬鹿なので、楽譜も読めないけどね。」
おばあさん「そんなことは気にしないで、お箏に親しんでほしいわよ。」
杉三「そうだねえ。でも、古筝よりも難しい楽器だと思っているので。」
おばあさん「まあ、そう言われてみればそうかもね。でも、本当にあなたみたいな発言してくれる人がいてくれたら、私たち静岡邦楽連盟は、涙を流して喜ぶわ。」
蘭「静岡邦楽連盟?」
おばあさん「そうよ。私は静岡邦楽連盟の会長。」
杉三「なるほど!それで黒紋付だったわけね。でも、黒紋付って今はお葬式用で定着していると思うから、こういうときはちょっと変って言われるほうが多いかな。まあ、邦楽の関係者であれば、着ることもあるかもしれないが、あんまり一般的ではないよねえ。」
蘭「杉ちゃん、偉い人に滅茶苦茶なこと言わないの!こんな時に葬儀だなんて。」
杉三「事実そうだからそういったの。」
おばあさん「いいえ、そう勘違いされることは多いのよ。もう、この恒例も忘れられているかな。」
杉三「そうそう。本来の着物のルールさえ忘れられているし、それではいけない!」
おばあさん「全くね。それではいけないなんて言ったら、若い人から袋たたきになることだって珍しくないわよ。でも、よかった。今日は、まだ古典箏曲を支持してくれる人がいたというだけでもうれしいわ。本当に、黒紋付が喪服と化してしまうのも嫌だもの。それをわかってくれる人がいただけでも、良しとしておきましょう。」
杉三「それだけでそんなに大喜びするんかい。」
おばあさん「そうよ。そうしなければ、本当に黒紋付の価値もなくなるもの。それだけでも、うれしいことよ。だから、実質的な結果には結びつかないけど、収穫はあったことにしなければ。さて、お稽古があるから、そろそろ帰るかな。」
杉三「えっ、その年でお稽古するんですか?こんな時間なのに?」
おばあさん「そうよ。習いたい人はいるけど、指導者はなかなかなりたがらないわよね。だからうちの教室も後継者がいなくて、私がお稽古をするしかないのよ。今日は、お二方に会えてよかったわ。じゃあ、また、来年も会いましょう。」
おばあさんは、前の座席につかまって立ち上がる。
杉三「ああ、一期一会だねえ。僕もお話しできて楽しかった。本当にまた来年も会えるといいね。そのためには、あのおかしな曲を、はやらせないことが必要だけどね。じゃあ、またねえ!」
歩き出したおばあさんに、杉三は手の甲を向けてバイバイする。おばあさんは静かに出口へ向かって歩いていく。
蘭「杉ちゃんはどうして、こういう人からは好感をもたれるんだろうか。本当に不思議だ。」
翌日。
富士市内だけで活動しているローカル新聞、岳南朝日新聞を開いた蘭は、驚きに驚く。
蘭「そうか、やっぱりあの曲は、受けたのかあ。」
インターフォンが五回鳴る。
蘭「あ、杉ちゃんだ。」
声「何が受けたんだって?」
蘭「なんであんなに耳が良すぎるんだ。独り言でさえも聞き取るとは。」
声「だから、何が受けたんだよ、聞かせろよ。」
と、ガチャンと音がして、杉三が食堂へ入ってくる。
蘭「だから、勝手に入ってこないでよ。いくら上がり框がないからと言って、どんどん人の家にはいるもんじゃないだろ。」
杉三「だって、知りたいことがあったら聞きに行くのは当り前じゃないか。」
蘭「杉ちゃんに答えを言ったら、がっかりするよ。」
杉三「がっかりするかは、こっちが決めることだから、教えてくれ。」
蘭「だって、がっかりした後いつも人に迷惑をかけるでしょ、杉ちゃんは。」
杉三「それだって、教えてくれなきゃわからない。」
蘭「しょうがないな。もう、本当に落ち込むなよ。いいか、今日の岳南朝日新聞に書いてあるんだけど、昨日の水野麗華先生の曲がもう大好評で、出版の依頼が来ているんだって!」
杉三「そうか。とうとう、黒紋付は、いつまでたっても葬儀用のままか!」
蘭「そんなことは関係ないけどさ。まあ、いずれにしても、売りに出されることは確かだな。」
杉三「あーあ、日本人も立ち位置間違えたね。わざわざ、ショスタコのようになる必要もないのにねえ。」
蘭「まあ、そういう考えを持てるのは杉ちゃんだけだよ。」
杉三「あの会長さんだって、すごいショックだろうよ。」
蘭「時代は変わるってことさ。そういう事なんだよ。」
杉三「でもさ、古典が、ああいうおかしな曲に潰されるのは、なんだか悲しいよねえ。世界にはそれぞれのよさがある音楽があり、それぞれの持ち味がある。それでいいと思うんだけど、日本人ってのはどうして、無理やり塗り替えることばっかり考えるんかなあ、、、。」
蘭「まあ、それは僕らには変えることはできないから、仕方なく受け入れよう。それより杉ちゃん、今日は何の用で来たんだよ。」
杉三「今日は病院の日だろ。池本クリニック。」
蘭「そうか。そういう事だけは、カレンダーも読めないのに覚えているんだな。」
杉三「薬がなくなったらもらいに行かなきゃ。」
蘭「そうやって覚えているのね。じゃあ、行こうか。」
杉三「よろしく頼む。」
杉三がさほど落ち込まなかったので、蘭はほっとした。
池本クリニックの待合室。
杉三たちが到着すると、待合室ではたくさんの人が待っている。
杉三「すごい人。」
待合室のすぐ近くに精神科と書かれた看板が見える。
蘭「精神科の先生雇ってから、この病院も田舎病院ではなく、患者さんが大量に増えた。」
杉三「院長、商売うまいなあ。でも、精神の関係ってさ、本当に必要な人よりも、そうじゃない人のほうが多くて、必要な人がちゃんと見てもらってないような気がする。」
蘭「そうだね。確かに、発達障害とか、医者の専門的な知識がないと、対処できないものもあるが、たいていは、家族がちょっと変われば、簡単に解決できる程度のものだよね。」
杉三「それが、非常に苦しくて、解決するのが難しいところだが、、、。一番難しい科かもしれないぞ。」
蘭「ほんとだ。」
近くのソファに一人の若い男性が座っていた。隣に中年の女性と、凛々しい顔をした女性と二人座っている。たぶん、ソーシャルワーカーとかそういうものだろう。
看護師「市川さん、市川友助さん。」
ソーシャルワーカーが彼の肩を叩く。
杉三「彼も、何かしたのかなあ。」
蘭「どうだろうね。」
看護師に連れられて、精神科の看板を通り過ぎていく三人。
それを杉三たちは、心配そうに見る。
杉三「まだ若いのに、こういうところのお世話になるのは、早すぎるんじゃないの。」
蘭「いや、若い人ほど、免疫がないから深刻なんじゃないのか。」
いつも通りに、杉三たちが短時間診察を終えて廊下に出ると、院長とすれ違った。
杉三「よう、院長さん。相変わらずの禿げ頭だな。」
蘭「またそんなこと言って!」
院長「いやいや、事実そうだから仕方ないよ。いくら脱毛を試みても抜けるんだよ。」
杉三「やっぱりテレビは嫌いだなあ。」
院長「それより、杉ちゃん。いつまでたっても車いすを新しいものにしないのか。そんなおんぼろの車いすじゃ移動しにくいだろ。」
杉三「いや、ぶっ壊れるまでこれで移動するさ。」
確かに、車輪も劣化して錆びており、いかにも水ぼらしい車いすである。
蘭「すみません。こんな汚らしいもので。」
杉三「だって、補助金とかもらいに行くのが面倒くさいんだもん。」
蘭「そうだけど、身だしなみってものも考えろよ。」
院長「全く変わっているな。そんな古いものに今でも乗っているなんて。」
杉三「古かろうが、身だしなみが悪かろうが、のっけてくれて、移動させてくれればそれで満足さ。」
と、近くにあった診察室のドアがガチャっと開き、
声「どうもありがとうございました。」
中年の女性の声と同時に、先ほど見かけたあの男性が廊下に出てきた。ソーシャルワーカーはまだ話があるらしく、出てこなかった。
杉三「ずいぶん長く話していたんだな。」
がっかりと落ち込んでいる男性。年齢はまだ、20代そこそこで、蘭たちから見るとまだ青二才というところなのだが、彼はもう生きているのは嫌だと言いたげな顔をしている。
杉三「君君、まともにご飯を食べたのは、いつだった?」
後を振り向く男性。
杉三「君、市川友助っていうんだよね。僕は、影山杉三だ。杉ちゃんと呼んでくれれば、それでいいから。」
そう言って、彼に近づいていく杉三。蘭が急いで止めようとするが、院長が余分なことはしなくていいからと彼を止める。
杉三「大丈夫だよ。そんなに悪い人ばかりじゃないよ。世の中は。ちっとやそっとのことでそんな絶望的になる必要もないから。それよりも、うまいもんをたくさん食べて、よく休ませてもらえ。そうすれば、必ず回復するぜ。まだ、そういう事ができる年だもんね。」
蘭「杉ちゃん、若いんだものと言わないのがすごいよな。」
隣にいた女性が、友助の肩を掴む。
女性「すみません、この子、昨日の箏曲演奏会で、麗華先生が描いた桃の花という曲が演奏されたという、岳南朝日新聞を読んだら、いきなり新聞をビリビリに破いて、あれば自分が描いたのだとがなり立てて泣きだすので、連れてきたんです。しばらく、外へは出させないほうがいいと言われましたから、失礼します。」
杉三「えっ、じゃあ、あのショスタコーヴィチみたいな曲を書いたのは、君なの!」
女性「そんなことありません。だから、お医者様に真偽を見てもらおうと思って!」
杉三「ああ、なるほどね!確かに女性にはああいうもんはかけないよ。そういうトリックだったわけね。よし、これをばらしたら、二度と麗華は出られなくなり、古典箏曲もつぶれないで済むし、黒紋付も着用され続けるだろう。僕も手伝うから、一緒に何とかしよう。」
蘭「杉ちゃん、そうじゃなくて、その主張は妄想という症状なんじゃないの?」
女性「そうそう。お医者様もそういってましたよ。」
友助の顔に、ぽろんと涙が浮かぶ。
杉三「ああ、ああ、辛いところだよね。あらかじめ前歴があると、信じてもらえないよね。でも、受け入れてもらえなかったら、進歩することもないと知っているから、僕がなんぼでも聞いてあげるよ。僕、馬鹿だからどうせ聞いても理解することできないもん。そういう人間だから、君の話を聞いても損にも得にもならないんだ。だから、僕になんにでも話してほしいな。」
友助「聞いてくれたんですか、、、?桃の花。」
杉三「聞いてくれたって?ああ、あれをね。あれは桃の花というより、焼夷弾の連打というような曲だったねえ。」
友助「そうですよね。ごみ箱に捨てておいたのを、麗華先生はどうして持ち出したのだろう。」
杉三「なるほど。書いた君自身も、さほど良い曲とは思わなかったのね。うん、それで正常だ。君、麗華先生のお弟子さんだったの?」
友助「ええ。お箏を習ってました。」
母親「水野麗華先生は、とても親切な先生で、この子が、教室まで対人恐怖で通いに行けないと言ったとき、うちまで出げいこに行くからいいと言ってくれたんですよ。そんな先生が、あの子のくだらない曲を盗み出して、演奏したなんてあり得ないでしょ。わからないこと言わないで帰りましょ。」
杉三「いや、僕は、演奏会で、その曲を聞いている。その時の態度から判断すると、さほど
良い先生のようには見えなかった。だから、陰でそういう事をしていたって、何かわかる気がする。まあ、積もる話は食べてから。きっと君は、ご飯を食べてないんじゃないか。だったら、僕のうちに来て、ゆっくり話してよ。」
友助「でも、どうやって行くんですか。」
杉三「僕たち、タクシーで来ているから、それに乗ってくれれば。蘭が、電話して呼んでくれるし。」
蘭「いつの間に、僕は連絡係になってしまったのか。」
杉三「僕は、蘭の主人じゃないよ。友達だからな!カレーを作ってあげるから、うちへきて、思いっきり食べて、悪いもんは全部出してしまいな!」
母親「結構です。そんな見知らぬ人に聞かせるなどしたら、困ります。」
院長「いやいや、行ったほうがいいですよ。彼は、つまり杉ちゃんは、話を聞くには天才的ですからな。それにカレーだって、びっくりするほどおいしいですから。それは私が保証します。」
母親「でも、、、。」
院長「大丈夫ですよ。彼には素敵な仲間がたくさんいて、その人たちが、癒してくれますから。私たち医者よりもずっと効果的です。」
蘭「素敵な仲間ねえ、、、。」
杉三「院長、そういういい方されるとくすぐったいよ。」
友助「わかりました。僕が作った曲を聞いてくださった方ですから、思いきってこの人たちと行ってみます。」
院長「そうですよ。お母さんも、久しぶりに、買い物でもしてくるといい。リフレッシュできるのではないですかな。」
友助「それがいいですね。毎日、申し訳ない気持ちでいっぱいですから。」
杉三「よし、決定ね!それなら話は早いや。僕のうちに行って、思いっきりカレーを食べてもらおう。客をもてなすときは、カレーが一番なんだから!」
蘭「わかったよ。タクシー呼んでくる。」
ため息をついて、スマートフォンをダイヤルした。
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