第124話 ウラン爆弾の恐怖
「ゴウ隊長、ウラン爆弾らしき物は発見できません。それどころか、爆弾開発に関係する物は全てありません」
アシュクが報告してきた。
「よし、撤収する。下手をすると爆弾が設置されている可能性もあるから、ここにぐすぐすしてはいられない」
ゴウの指示で建物内に散らばっていた隊員が直ちに撤収してきた。
「撤収!」
人が建物の中から外に出ると最後に戦車が出て来た。
「警備員は確保」
「既に確保済です」
警備員を連れて、駐屯地に戻ったが、警備員からは有益な情報は何も得られなかった。
隊員たちは、駐屯地の隔離部屋で除染を行い、通常勤務に戻る。
建物の周辺はアロンカッチリアさん、ミュ、ネルで土魔法で固めて、放射能が外に出ないようにしたが、後から、もう一重のシェルターが必要になるだろう。
「セントラルシティのCICから連絡がありました。昨夜、建物から出る車輛の列が分かりました」
「どうして、昨夜なんだ?」
「はい、監視衛星でも夜の監視は、なかなか難しいものがあります。特に月がなければ目印となるのは車のヘッドライトぐらいですが、それを捕らえるのは拡大して画像解析するしか方法がありません。
敵はその弱点を突いて、新月を見計らって移動したと思います」
今回、我々は後手後手となっている。
アリストテレスさんとゴウ、それにアシュクを交えて協議をする。
「帝国全土に厳戒態勢を発しています。北方方面に展開していた部隊も半分をこちらに向けています」
これはアシュクが報告してきた。
「既に昨夜の部隊でウラン爆弾を運び出したと考えていいでしょう。その時点で、核分裂電池を破壊したのでしょう」
これはアリストテレスさんだ。
それに間違いはないだろう。用がなくなったので、重要な機器を破壊した。それに伴って放射性物質をばら撒く事で、一種のテロ行為を行った訳だ。
だが、それはアロンカッチリアさんの土魔法で、取り敢えずの対応はしてある。
「トントン」
その協議の中に入って来たのは、坑道を調査していた部隊の隊長だ。
「ご指示のあった坑道を調査しましたが、塞いだ坑道の底には約300人のも遺体がある事が分かりました。
なにせ、土魔法で塞いだ後なので、大まかにしか分かりませんが…」
「どうやら、坑道として掘ったが、それを使わずに遺体の廃棄場所にしたようですね」
アリストテレスさんがその報告を受けて言う。
「何故、坑道として使わなかったのだろう?」
「これは、あくまで想像ですが、陛下がエマンチック国と友好を結んだために人の往来が多くなり、例の建物が目立ってきたので使わずに離れる決定をしたのだと思います」
「すると、そこから何か想定できるか?」
「最初、相手はエマンチック国を侵略しようとしました。このイリシーゲルを地下から破壊し、そこを新しい国とするとしたらどうでしょうか?」
「イリシーゲルは放射能で汚染されたから、エルバンテ軍はそこから東には行けない。従って、エマンチック国は独立できる」
「ですが、空軍があります。地上が汚染されても問題ないのでは?」
「領土を制圧するのは陸軍による進行は欠かせません。それに空から制圧しても、イリシーゲルで隔離される事に違いはありません」
「だが、エマンチックにはポセイドン王がおられる。そう簡単に武力制圧はできないぞ」
「それも、ウラン爆弾で脅せばいいのです。いわば、住民を人質に取ったということです」
アリストテレスさんの言葉に、俺たちは言葉を無くす。
既に拘束してあるケントに話を聞いてみる必要がありそうだ。
俺たちは憲兵隊庁舎に行き、ケントと会った。
「郊外にある建物を家宅捜査したが、既にもぬけの殻だった。お前は、行先を知っているだろう。
ナルディたちはどこへ行った?」
「さあ?私は知らないな」
知らばっくれるが、「はい、そうですか」という訳にはいかない。エルバンテが危機に陥る可能性が高いのだ。
「ミュ、頼む」
ミュが前に出て、ケントの目を見つめると、ケントの目の焦点が合わなくなってきた。
「ウラン爆弾はどこへ運んだのですか?」
「どこに運んだかは知らない」
「あなたは、ウラン爆弾が運び出される事は知っていましたか?」
「いや、知らない」
「あなたが、エマンチェック国を侵略しようとした目的は?」
「あの国に国を建てる予定だった。そして、イリシーゲル市を地下からウラン爆弾で壊滅させれば、エルバンテ帝国もそう簡単に攻めて来れない。
俺はエマンチック国の宰相になる予定だった」
「ですが、貴方は捨てられた」
「いや、そのうち仲間が助けてくれる」
どうやら、エマンチック国を侵略しようとした事は俺たちの推察の通りだったようだ。
いろいろな話を混ぜて聞くと、情報が得られる事があるので、いろいろな話題を混ぜて話す。
「エルバンテ領に統合された事に不満があったのですか?」
「そうだ、領主は貴族の意見を無視してエルバンテに統合しようとした。我々貴族はそれには反対だった。もし、武力を使うなら対抗するつもりだったのに、ジルコール将軍が領主側に就いた」
「ジルコール将軍は何と?」
「キバヤシと武力で勝負するのは愚の骨頂だと」
「しかし、結果的に領土を明け渡した」
「そうだ、貴族のうち、優秀な者がエルバンテに入り、中から崩す事を長い間画策する事にしたんだ。エルバンテ王は広く優秀な人材を集めていたから、試験に受かれば良いだけの事だった」
「ナルディの兄弟たちは?」
「結局、ナルディの言いなりになった。やつはその時の貴族を纏め上げたんだ」
「それで、ウラン爆弾はどこに行ったと思いますか?」
「エマンチックがだめならサザンランドに国を建てると言っていた」
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