第31話 ミュVSネルエデッィト

 バルコニーに出てみると、空中でお互いが向かい合っている。

「ファイヤーボール」

 ミュがファイヤーボールを出した。そのファイヤーボールは直径が5mぐらいある。

 昔は3mぐらいだったが、年齢を重ねて大きなファイヤーボールが出せるようになった。

「ファイヤーボール」

 今度は、ネルだ。

 こっちのファイヤーボールも5mぐらいある。

 両方が投げつけると2つのファイヤーボールが真ん中でぶつかり合い、大爆発を起こす。

 それは、夜空に咲いた花のようで、まるで花火を見ているようだ。

 夏休みに田舎に行った時に、お婆ちゃん、お爺ちゃんに連れて行って貰った花火大会を思い出した。


「ファイヤーアロー」

 今度はファイヤーアローだ。無数の炎の矢がミュの前に現れる。

「ファイヤーアロー」

 ネルも同じように無数の炎の矢を出した。

 両方向からファイヤーアローがぶつかり合い、これも花火のように飛び散るが、何本かは相手に向かって行く。

「シールド」

「シールド」

 どちらも結界で防ぐ。


 火魔法を出して、暫くの間、静寂が訪れた。

 お互い相手の力量を見計らっているのだろう。

「サンダーボルト」

「サンダーボルト」

 今度はサンダーボルトだ。

「ドォーン」

 大きな雷が、二人の間でぶつかり合うと、その雷が、王宮の塔に落ち、大きな音とともに塔が崩れた。

「あ、ああ、塔が…」

 ワイシコフ宰相が項垂れる。

「よくも私の王宮を壊してくれたわね」

 ネルよ、半分はお前にも責任があると思うぞ。


「サンダーアロー」

「サンダーアロー」

 今度はサンダーアローの応酬だ。

 サンダーアローは二人の真ん中でぶつかり合うと、また花火のようになって飛び散った。

 これが争いでなかったら、こんなきれいな花火はないだろう。

「きれい」

 思わずラピスが呟いているが、それは皆が思っている事だ。

 二人の力は互角で、決着がつかない。

「ウォーターカッター」

「ウォーターカッター」

 これも空中でぶつかり、雨となって落ちて来た。

「ウィンドカッター」

「ウィンドカッター」

 風魔法は防ぐのが困難だ。

 ミュは空中で風の刃を躱す。対するネルはこれも上手に箒を操って躱している。

 後は土魔法になるが、土魔法は地面でないと使えない。

 二人とも使える魔法は出尽くしたと思われた。

「ブラッドスパイク」

 ネルが赤く小さな棘のようなものを無数に出して、ミュに投げた。ミュはそれを躱すが、赤い棘はミュを追って行く。

「シールド」

 ミュが結界を出した。赤い棘は結界に当たるが、結界はなかなか破れない。

 だが、それは結界に弾かれても、また襲って来る。それが永遠に続くとなると心理的に辛い。

「パリン」

 ミュの結界が破れた。俺はミュの結界が破られるのを始めて見た。

 結界が無くなったミュに赤い棘が襲い掛かる。

「スィープ」

 エリスが叫ぶと、ミュに向かっていた、赤い棘が消えた。

「はい、そこまで。この勝負、ネルの勝ちね」

 エリスが勝敗を下した。

 ミュが降りて来た。

 だが、ミュはその場にうずくまり、泣きだした。それをラピス、エミリー、マリンが慰めている。

 ネルもバルコニーに降りてきた。

「ほほほ、どうかしら、これで、私もご主人さまと呼ばして頂きます」

 俺はミュの所に行って、ミュを抱き締めた。

「ご主人さま、私…、私…、負けてしまいました。これでは、ご主人さまをお守りできません」

「何を言う。俺を守ってくれるのはミュだけだ。今後もしっかり守ってくれ」

「ご主人さま、私は嬉しいです」

 そう言って、また泣き出した。


「ご主人さま、勝ったのは私です」

 ネルが自分が勝った事を訴えてきた。

「ミュは今、落ち込んでいる。ミュの魔法力はネルに劣るものではないが、俺と一緒に居る事で優しさを覚えてしまって、気付かぬうちに手加減をしたのさ」

「な、なんと」

「そんなミュは、今まで俺たちと数々の想い出を築いてきた大事な家族だ。放っては置けない」

 ネルがしょんぼりしている。反対にミュは赤い目で俺を見つめてくる。

 これはやばい、また精を求められたら、身体が持たない。

 今夜もまた、昨日のような事が起こらない事を祈ろう。

 ネルを妻に迎える事になったものの、ミュと争ったからか、嫁たちとの間に溝がある気がする。

 それはまだ馴染んでいないということもあるだろう。

 俺は夫として、この嫁たちと、どう向き合えば良いのだろう?

 ふと、エリスを見ると、欠伸をしている。

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