[建売住宅]-2- 数年後

 その後、何年かたって、私は中学校に上がった。

 流石にその頃になると父親が家に人を呼ぶことは極端に減っていった。


 そんなある日、朝の地方のニュースで、町内で殺人事件があったなんて話を報道していた。狭い町だ。どちらも顔見知りである可能性がある。そう思って、家族全員がテレビに釘付けになった。

 結論から言うと、加害者はAさんだった。

 疎遠にはなっていたが、表示された住居も名前も、ポートレートを切り取ったような不鮮明な写真もすべて記憶と一致していた。

 Aさんが刺し殺したのは、古い家の方のすぐ裏に住んでいた甥だったという。動機は騒音のトラブルだったというが、皆、首を傾げていたようだ。

 Aさんの甥の家は特に騒がしいこともなく、寧ろ頻繁に被害者宅に乗り込んでいくAさんの方が騒々しい位だった。

 偶々近所に住まう知人は、後にそう語っていた。


 ニュースを見た父は妙に冷静だった。そういえばもう一軒家があったのに、と新しい家の事に触れると、父は急に無言になった。

 そして、暫くの間の後、独り言のようにこう呟いた。

「あそこは恐ろしくて住めないから、物置になってたんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る