えりかは真実を知りました

 三部構成の第二部です

 ______________



 ___1時間前



「それはですね…………えりかさんがここに来るまでの経緯、そして……由莉さんの隠している秘密」



「わたし……が……?」



 阿久津さんが来たのはゆりちゃんが出ていってからすぐ後だった。そこで言われた事はゆりちゃんからも聞いたことのないことばかりだった。



「まず、由莉さんは……スナイパーをやっています」



「すな……いぱー?」



 最初は全くその意味が分からなかった。けど、阿久津さんに丁寧に教えて貰ったおかげで理解出来た。……正直、少しだけゆりちゃんの事が怖くなった。遠くから人を狙って殺す、そんな事をゆりちゃんがやってたんだと思うと……少しだけ……。



「ゆりちゃんは……もう……」



「…………はい。既に由莉さんは2人を狙撃しています」



「…………っ」



 分かってて聞いたつもりだったけど……やっぱり大好きなゆりちゃんの事がますます怖くなった。手がガクガクと震えて声も出しにくかった。



「そして……えりかさんを保護したのもその時でした」



「えっ…………?」



 そこでわたしはここで目が覚める前、どんな状況にいたのか初めて教えられた。わたしは、じんしんばいばい……?の人に捕まえられ売られる所だったみたい。売られたら……どちらにせよ、殺されてた。そう言われて、わたしは愕然としたよ。



「そして、その人身売買の引受人こそが……由莉さんが狙撃した人の1人です。もう1人は……えりかさんを買い取ろうとしていた人です」



「…………っ」



 わたしもここまで言われたらなんとなく分かったよ。



 ゆりちゃんがその人達をやってくれなかったら……わたしが死んじゃってたことを。



「……先に言うと、えりかさんを最初に見つけたのは由莉さんです。えりかさんが乗せられていた車と1回すれ違ったみたいで、その時、偶然か由莉さんはあなたの存在を分かっていたみたいです。そして……狙撃し終わって由莉さんが私の車に乗るなり、必死にこう言ったんです。『その子を放って逃げるなんて出来ないから助けたいんです』って」



「あ……あぁ…………っ」



 涙が溢れて止まらなかった。ゆりちゃんはわたしを助けようとしてくれたのに……なのに、わたしは少しだけゆりちゃんの事が怖くなっちゃった……どうしよう…………ゆりちゃんになんて謝ればいいんだろう……っ



「そして、えりかさんを発見して保護した時……正直、あと10分発見が遅れていれば……恐らくは…………熱中症を発症して……」



 その先は言われなくてもなんとなく分かった。わたしは……ずっと側にいた大好きなゆりちゃんに……





 こころだけじゃなくて命も助けられたんだ…………





「由莉さんのやっている事はえりかさんには受け入れ難いかもしれません。ですが、それでも……」



「大丈夫です。ゆりちゃんがわたしの命を助けてくれた。それだけで……っ」



 確かに…………ゆりちゃんが人を殺しているって聞いた時、びっくりしたし……怖かった。けど、今はもう怖くなんてない。

 それに……わたしはいつまでもずっとゆりちゃんの味方だって約束したんだから。助けてもらって……それなのに、怖がるなんて……出来ないよ…………。

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