由莉は心配しました
「さてっ、何しよっか?」
由莉はえりかの顔を覗きながら聞いてみたが、えりかもどうしようかと、頭を抱えている所だった。由莉には___2人以上で遊べる遊びを全く知らなかった。
「うーーん……どうしよう。わたしもそんなに遊び知らないし……」
そうそうにやる事が無くなってダウンしてしまい部屋には沈黙だけが広がっていた。すると由莉は何とか話題作りしようと少しだけ自分の事を喋り始めた。
「私ね、こうやって今ここにいるのも奇跡みたいなものだし……えりかちゃんと一緒にいるのも本当に信じられないくらいなんだよ……」
えりかは最初は聞いていたが、ある一言を聞いた瞬間、えりかはおかしくなった。
「最低でも4年以上は……ずっと一人だったから今がすごく幸せなんだ……よ…………?えりかちゃん、どうしたの?」
「ずっと…………ひとり……?ずっと……一人…………」
何かに取り憑かれた様にずっと呟いていた。その様子に明らかに変だと感じた由莉はえりかを揺さぶった。
「えりかちゃん?ねぇ、えりかちゃん!」
「わたしは……わたしも…………一人だった……?」
えりかは自分の中に何かが流れ込むような気がした。今の自分とは似ても似つかない……そんな何かにえりかは呑み込まれていった___
「…………うっ」
「えりかちゃんしっかりして!えりかちゃん……っ!」
そばで自分の大切な人が苦しんでいるのに何も出来ない、そんな無力さが由莉の心臓を貫いた。そっとえりかに触れようとした由莉は__次の一言で固まる事になった。
「パパ…………ママ……どこ?」
「えっ___」
由莉にはあまりにも重すぎる言葉だった。えりかちゃんの記憶が……戻ろうとしてる……?それに……苦しそう……でも、パパと……ママかぁ……えりかちゃんには___家族がいたんだ。きっと優しいパパさんとママさんだったんだろうなぁ……私には……
そんな人いなかったなぁ……
由莉は少しだけ羨ましくなったが、そんな感情に浸ってる場合じゃないとえりかの手をぎゅっと握った。
「おいてかないで……一人にしないで…………っ」
えりかは既にそこに心あらずで独り言のように喋り続けた。そんなえりかの様子は由莉にとっても苦痛だった。
(だめ、もうこれ以上見ていられない……っ)
由莉はサッと立ちあがり、えりかの真正面に来ると思いっきりえりかをベットの上に押し倒した。こうするしかえりかのこの状態を止める手段はないと由莉は思った。
「えりかちゃん!お願いだからしっかりして!もう……えりかちゃんが苦しんでいる姿を見るのは……耐えられないよ…………っ」
由莉の涙がえりかの顔に一粒落ちたその瞬間、えりかの焦点を捉えてないような瞳が由莉の目を見た。みるみるうちにえりかの意識が戻ると同時に涙が伝っていった。
「ゆり……ちゃん、わたし……少し思い出したよ……自分の記憶を……」
「えりかちゃん……心配したよ……!もうどうにかなっちゃいそうだったよ……」
気が抜けたせいか由莉までも涙が目に滲んでいた。そんな由莉をみてえりかは手を伸ばし頬に伝った涙をそっと拭いてあげた。
「ごめんね……ゆりちゃん……心配かけちゃって……」
「……ううん、えりかちゃんが無事でいてくれれば……それでいい」
他からみたら完全に百合だと思われかねない体勢だったが、由莉とえりかはたった二人だけの空間で暫くの間、その姿勢でお互いを見ていたのだった____
_____________
「ゆりちゃん……わたしね、少しだけ……記憶が戻ったよ……?」
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