由莉は魘されていました
少し話を分けたいと思いますね
_______________
「由莉は__さすがに寝ているな。」
仕事を終わらせてマスターが夕食を持って由莉のいる部屋に行ったのはそれから2時間後の事だった。
由莉は___眠っていた。眠ってはいたのだが……
(まるで悪夢に
その顔は険しく夢の中で何かに怯えているような表情だった。心配だったが寝てる最中に起こしても悪いと思ったマスターは近くの机に持ってきた夕食を置いてそのまま出ようとした____その時、
「ぃゃ……」
部屋を出ていこうとしたマスターが小さな声に反応して振り返ると由莉は震えた声で「いや……いやぁ……」と繰り返していたのだ。直感的にまずいと感じたマスターはすぐに引き返し由莉の側にいることにした。
始めは小さな声だったのが段々と大きな声になってさらに「やめて……っ!なんで……」と別の言葉も発するようになった。由莉の心の中でずっっと我慢していたものが崩れさっていくかのようにその声は悲しみを帯びていた。
(ずっと……無理してたんだな……この子は……)
マスターは由莉の言動を少し振り返った。虐待を受けている子があんなに元気に振る舞えること自体……正直、有り得ないくらいだ。それに、普通の子では……もう精神がおかしくなって死んでいても……不思議でない。実際そのくらいの傷を受けていた。そんな身体的、精神的な痛みを自分の心に鍵をかけて遮断して……由莉は必死に生きようとしてきたのだろう。それでも……そんな状態が続くわけがない。だから、こうやって「悪夢」という形で外に漏れ出している……。
由莉の悲痛な叫びを聞いているのはとても辛いものがあった。マスターは何となくその姿を自分の知っている人に重ね合わせてしまっていたから尚更に___。
(この子は……似ている……。あの子に___)
「由莉…………」
なんで……なんでこんなことするの……?
やめてっ……お願いだからやめ……て……!
うぐっ……けほっけほっ……くぅ……っ
い…きが……でき……な…………い………
私は……誰からも……必要とされてないの……?
誰も私の事なんて見てくれない……
なんで……私だけこんな目に合わないとダメなの……?
生きたい……生きたいよぉ……
他の人みたいに……普通に……ただ普通に……
生きたいだけなのに……っ
嫌だ……まだ死にたくない……っ
嫌だ……いやだいやだいやだいやだいやだ……っ!
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