調子に乗りました。

《ラロック・アイス・スノウフィールドに移動しました!》








さっさと準備をして、俺はまたクマさんの場所へと向かう。






いやいや、あれだけ高く売れたらね、行くしかないよね。




レベル上げにするとかなり効率は悪い。というかあれだけ時間かけて一匹となるとな……




まあでも金稼ぎに関しては別だ、次も売れるかは分からないけどもやってみる価値はある。






作戦としては、最初に大量に落とし穴を作っておいて、出来たらクマさんを落としまくるという方法だ。




安全、効率を考えればある程度作って一匹仕留め、また穴を~が良いんだが、一気に最初で作っておいた方が楽だしな。






よーし、そうと決まれば掘りまくるぞ!






〈ジャイアントベアーlevel25 アクティブ〉






おー危ない危ない。すぐそこにクマさんが。






例の石の影に隠れて……しっかり周りを見て、右ヨシ左ヨシ!よしOK。




気配を遮断し、ひたすらに地面に向かう。






―――――――――――――






《採掘スキルのレベルが上がりました!》




《潜伏スキルのレベルが上がりました!》




あれから30分、穴は10個程。スキルが上がった。




穴がかなり場所を取ってきたので、そろそろ別の場所に作らなければ。




ここ付近のモンスターはバーバヤーガとジャイアントベアーの二匹が主であり、バーバヤーガが落とし穴に引っかからないのは調査済みだ。




まあ浮いてるし。




そしてバーバヤーガとジャイアントベアーの徘徊エリアは被らない。




まあつまり、バーバヤーガの徘徊エリアで落とし穴を作っておけば、大量に穴をストック出来る。




後はその場所にジャイアントベアーを誘い込めばいいって事よ。バーバヤーガの攻撃は気合で避けます。






ちなみに穴を作る時には、気配察知スキルのおかげでモンスターが近付いてきた時にすぐ分かる。優秀だね。




よっぽどの事が無ければ恐らく死ぬことはない……だろう。よーし、引き続き掘りましょう。






――――――――――――――






《採掘スキルのレベルが上がりました!》




《罠作製スキルを取得しました!》




引き続き穴を20個程作製。見たことのないスキルが出てきた。




採掘スキルだけかと思ったらね、出てきたわ。




罠作製、か。まあ確かにこれ罠だよなあ……






□□□□□□□□□□□□□




≪スキル説明:罠作製≫


レベルに応じた罠を作製する事が出来る。


レベルが上がると罠作製時間が減少し、罠の質も上昇する。


≪現在作製できる罠作製≫

落とし穴:必要MP20 クールタイム30秒 


ある程度の穴に発動でき、落とし穴を作製する。穴を攻撃されると落とし穴は解除となる。




□□□□□□□□□□□□□






うん、まあ予想通りだ。




MP消費が意外と少なくていいね。




ただ結局穴を自動で掘ってくれるわけじゃないからな……




まあいいや、さっそく発動してみよう。




えーっとさっき作った穴に注目して――






「落とし穴作製!」






そう唱えると、魔法発動の時ようなロードが続き……ポンと効果音のようなものが鳴る。




と同時に、丁度雪で蓋をしたかのように穴が全く見えなくなった。






〈『落とし穴』〉






そこを注目すると、分かりやすく名前と穴のアイコンのようなものが出る。こりゃあ恐ろしい。これ多分俺にしか見えないやつだ。




よく見てみれば、穴の縁に円状にそった線が見えるが……これは警戒していないと分からんな。結構恐ろしいスキルかもしれないね。




俺も認識出来るとはいえ、下手こいて引っ掛からないようにしなくては。






「よ、よーし」




若干引き気味になってしまったが、恐らくダメージも前よりかはかなり増えるはず。テンション上げていこう。




「落とし穴っと」




間違って踏まないようにしながら、俺は引き続き落とし穴を作製していく。




同時進行で穴掘りも忘れずに。




おっと、クマさんとダルマにも気を付けてな。






――――――――――――――




時が流れ……一時間半ぐらいだろうか?






「ふーっ」






疲れた。俺の周りは、総勢30個程度の落とし穴が広がっており、苦労した跡が残っている。




汗などかいていないが額の汗を拭う動作をしてしまうな。




ゲームだけれども結構くるね。また前みたいにVR酔いしないようにしないとね。






「……よーし」




俺は一息入れた後、インベントリを開く。




ポテチにハンバーガー?のようなものにドーナツなどなど……様々な間食。




そしてコーラの色をしたコーラ味のコーラのような飲み物。コーラではない。多分ね。






……そう、休憩タイムである。予め屋店で買っておいたのだ。ははっ、何しろ今の俺は金持ちなんだぜ?




あたり一面にそれを広げ、口に入れていく。






「う、うめえ……!」






この空間は、この世界でしか出来ない夢の空間だ。




栄養度外視のジャンク全振り。リアルなら体が拒否するね。






大量の俺製落とし穴を肴に、ポテチを頬張りコーラを流し込んでいく。




昔の俺も、ネトゲしながら食うこれがご馳走だったっけな。






ああ、久々に味わうこの感覚、幸せ過ぎる。こんな幸せあっていいのだろうか。




いやあ――やっぱり、VRは最高だぜ!










――――――――――――――






「うっ、おえ……」






前言撤回だ……VRだからって調子に乗りすぎた。




なんだこれ。VRだろ?VRなのに胸焼けとかあるの?いや胸焼けとかではないな。なんか気持ち悪い。ひたすらに。




しかも全然食った気しないから満足感もない。なんだこれは。地獄か?




本当に味とか感触だけなんだな……まあそりゃそうか。




実際これで満足感もあったら現実で死んじゃうし。






くっそ……なんだよこの気持ち悪さは。






《状態異常:過食となりました。一定時間敏捷が低下します》






インフォさんが俺の問いに答えるようにそう告げる。






「ま、まじっすか」






初の状態異常が食い過ぎっておい。




勘弁してくれ……そこまでリアルにしなくても良いんだよ?




ステータスを見れば、敏捷がマイナス二割程されていた。これは痛い。






「……掘ろう」






上がり過ぎた俺のテンションは急降下で止まらないのだが、手を止めるわけにはいかない。




うむ、きっと体を動かせばすぐに治るさ。必ず。




そうと決まれば、散らかした間食達を――






「おっ、なんか雰囲気変わったな」


「うわ見てあれ!熊だー!こわっ!」


「なんか魔法使いみたいなのもいるわ!」


「おいおい気を付けろよ、アイツもうアクティブだ」


「バフかけ直しとくか……」






腰を上げようとしたその時、感じる気配に五つの声。




恐らく――『最前線』と呼ばれる奴ら。




冷や汗が背中を伝っていく。






……最悪の事態とは、連なって起こるモノ。




それを俺は、改めて思い知ったのだった。

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