初めての……

とりあえず周りを見渡してみる。



〈ブルースライム level11〉

〈ホッケウルフ level10〉

〈レッドバード level11〉



目についたのはこれぐらいだ。


……名前からしてスピードが無さそうな、ブルースライムを狙うことにしよう。


もちろん油断はしないぞ?


おそらく、一撃貰ったらそれだけでゲームオーバーだろうしな。




そういうことで、一番近くにいるブルースライムにそこ辺りに落ちている石ころを投擲。


hit!期待してないが、ダメージは0でした。


〈ブルースライム level11 アクティブ〉


よしよし。こい!


ブルースライムは、普通のスライムよりサイズが大きい。


二倍?ぐらいだろうか。


サッカーボールがビーチボール並みになったぐらい。


だから、動きも鈍いと思ってたが逆のようだ。


それに……



「うおっ」



何か水の塊のようなものを飛ばしてくるのだ。


水鉄砲と言うには威力が強すぎである。


なんとか伏せて避け、間合いを詰める。


そのまま、水鉄砲?の硬直で何も動けない所をナイフで一突きする。


追撃で蹴りでも入れよう。


吹っ飛ぶブルースライム。手応えあり!



「どうだ?」



……1%も削れてないぞ……


かなり吹っ飛んだように見えるんですが。


長い戦いになりそうだ。


―――――――――――――――――――


「はあ……はあ……くそ」


目の前には、HPが1割のブルースライム。


こいつは物理耐性でもあるのか、非常に硬いのだ。


そして定番のタックルも仕掛けてくるため、うかつに近寄れない。


なんとか俺の素早さで避けてるけど、精神的にも辛いよ。


うん、ここまで持ってくるのにどれだけ時間がかかったか……


俺のステータスじゃ、戦闘が長引くとやっぱり体力的にきついな。


「ふう、まだま――っ!」


一息つき、再度ブルースライムに対峙したその時。



ブルースライムとは明らかに違う方向からの、嫌な視線。


――気付いた時には、もう遅かった。


俺の体には矢が3本刺さっており、凄まじい勢いで俺のHPが減少していく。


不愉快な声音が、刺さった矢の方向から聞こえてくる。


「はは、なんでレベル2の雑魚がこんなとこにいるんだ?」


「さあ?でも初PKがこんなのはちょっと残念だわ」


「そういうなって。可哀想だろ?あれは人がいないエリア探して、ぼっちで頑張って狩してたんだからな、ふふ」


掠れていく視界の中、目についたのは3人組。


雑魚とか言ってる奴は大盾持ち。前衛だろう。


次に俺を殺したであろう女がエルフのような格好をした弓使い。


一番腹が立つアイツは、見るからに魔法使いという感じだ。



……うん、なんでこんな冷静に分析出来てるのか自分でも不思議である。


キレた時ほど冷静になるってのは、こういうことだな。


久々にPKされたからか、なかなかムカついている自分がいた。



――覚えとけよ。



そんな事を思いながら、俺の体は光の塵となっていくのだった。


――――――――――――――――――


《『始まりの町』に移動しました!》


《レベルが10以下のため、デスペナルティはありません》


《レベルが10以下のため、所持品のドロップはありません》


「ふーっ」


頭に流れるインフォを聞き流しながら、熱くなった脳を冷やすために深呼吸。


……さて、どうするか。


損失は特に何もない。


狩場の横によるPKなんて、MMOではまあよくあったことだ。



しかも、相手は恐らく格上。人数も3人、野良の連携がなってないPTでもなく、職のバランスも良いだろう。


普通に考えて勝てない、やり返すなんて考えるのは馬鹿な考えだ。



はは、まさかあいつらも、やり返されるなんて思ってないだろうな。



ぼっちの格下なんかに負けるわけないとか思ってるんだろう。



……そして、そんな馬鹿な格下のぼっちにやり返され無残に負けた時には、どんな顔をするんだろうか。




うん、怒りの感情と共にニヤニヤが治まらない。



こんな機会を与えてくれたあいつらには、感謝しよう。


久々に燃えてくる、昔を思い出すようだ。



はは、見てろよ……吠え面掻かせてやる。



顔真っ赤だって?いいじゃないか。



――PKこそ、MMOの醍醐味だろう?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る