異世界ごはんに憧れて

藤田明石

第1話

美味しい料理を食べている時、僕はとても幸せなんだ。

一食一食を大事に食べる。命を頂く。感謝して飲み込む。

僕はいわゆる、グルメってやつなのかもしれない。




その日、僕は道を歩いていた。近所の住宅街。休日だったからその日は学校…高校生の僕は当然休みで、ぶらぶらと、胸に緊張とわくわくを秘めながらも、気分よく歩いていた。


なんでかって?そりゃぁ、『食材探し』に決まってるじゃないか。





自宅についた僕は背負っていた『食材』をこの家の地下にある『調理室』に運ぶ。

いやぁ、便利なんだよねぇ。この『調理室』。


自宅についた僕は背負っていた『食材』をこの家の地下にある『調理室』に運ぶ。


いやぁ、便利なんだよねぇ。この『調理室』。なぜ僕の両親が地下でなおかつ防音っていう、犯罪者が好んで使いそうな部屋を作ったのかは知らないけれど、まったく使いやすいこと。


そんな事を考えながら、僕は『食材』が暴れないように、逃げられないように、紐で縛っていく。あ、ガムテープこの前使いきっちゃったのに買ってくるの忘れた。

しっかしこの『食材』、ほんと美味しそうだよなぁ…。


ぐぅぅぅぅ。

あ、お腹減ってきちゃった。

涎垂れそう…


あ。垂れちゃった。


「ん…んん……ぅ…え!?だ、誰!?わ、私に、何してるの!?」


あらあら。どうやら『食材』が起きたらしい。もうちょっと起きるのが早かったら未来がほんの少し変わってたかもしれないのに。残念だね。


「あ!あ、あ、あなた誰なの!?ここはどこ!?なんで、私紐で縛られてるの!?」


矢継ぎ早に『食材』がギャーギャー騒いでる。記憶喪失かよ。


「ねぇ!?なんとか言っ「うるさいなぁ黙れよ」んぅぐ!?」


あまりにもうるさいのでとりあえず腹を蹴る。『食材』は『食材』らしくしとけばいいのに。


「ぃ…痛…い…」


あぁ、僕は僕のこういう所が嫌になるんだよなぁ。『食材』は丁寧に扱わなきゃならないってのに。味が落ちちゃう。


「えっとね、まず自己紹介と挨拶から始めよっか?僕の名前は戸山楓。君を拐ってきた、犯人だよ」

そう言うと目の前の『食材』は目を見開き、こちらに恨みったらしい目線を向けてきた。


「やっぱり、あなたが」


おや。

「気付いてたんだ、なら説明しなくてもいいよね、僕の目的は」


「身代金ね」


「え?いらないよそんなの」


「え?」


? 何言ってんだこの『食材』。


「だったら…何が目的なの?わ、私の家が、パパがお金持ちだから誘拐したんじゃないの?」


あー…うん。

「なにか勘違いしてるみたいだから一応言うけれど、僕はお金とか正直どうでもいいんだよね」


「……え?」


「なんか会話するのダルくなってきちゃった」

僕は着込んでいた薄手のパーカーの内ポケットから、刃渡り10cmほどの折り畳み式のサバイバルナイフを取りだした。


「僕ね、あんまり会話するの得意じゃないんだ。それにお腹空いてきちゃったし。だからさ、これで『調理』するからちょっと黙ろっか?まぁ喋ってても結局は黙っちゃうんだけどさ」

今度はこちらが矢継ぎ早に言葉を紡ぎながら、空腹によるイライラを誤魔化すようにナイフを弄ぶ。


「え、ま、まって私『食材』ってどういう」


「よっし、『調理』開始ー」

ナイフを振り上げる。




























「おい、お前、そういやあの事件の進捗どうよ」

「いやぁ全然だよ。あんな気味が悪い事件、捜査も何もあるもんかっての」

「あぁ。確かになぁ、俺も詳しくはしらんが、アレだろ?被害者は全員女性、それも10代の学生ばかりで仏さんの死体は一部を除いて『食われて』たって話だろ?」

「そうなんだよ、『調理』しかけのやつや保存食、おまけに冷凍庫には『肉』がこれでもかってぐらい敷き詰められててな」

「ったく、これだけでも末恐ろしいってのになぜかその家の父親と母親は『調理』されずに庭に埋められて、そこのガキは数週間前から行方不明だって話だし…」

「あとな、あんだけ家ン中から凶器やら道具類やらが押収されたってのに、指紋一つ髪の毛一本すら見つからねぇ、周辺の防犯カメラには怪しい人物も映ってねぇときたもんだ」

「おーこわ。」

「いいから早いとこ犯人捕まえてくれよ?」

「無茶苦茶言いやがるぜ」

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