転生したら美少女だった僕、異世界のTSハーレム生活【キョドって可愛い御使】

双葉妖

その一 ルームメイトは危険少女?

 僕、如月きさらぎキョウ、十六才。あの世界では、高校一年生だった。この世界での性別は謎。冗談じゃなくて、正直、自分にも分かっていない。男の子の記憶を持っているけど、外見は女の子。生物学的には……、人間ですらないかも知れない。


 解けば腰下まで届く長い髪は明るい栗色のストレートヘア。それを編み上げることもあれば、ポニーティルにしていることもある。背丈は女の子としては高いほうで、華奢ってほどじゃないけど細身。瞳は鮮やかな緑色。鏡に映るその顔は、自分で言うのも変だけど、身に覚えの無い異世界的美少女。だから、これが僕の記憶の中にある世界ではないことだけは確か。


 アンティークな飾り窓から外を見ると、西洋風でファンタジーな景色が広がっている。起伏の多い街並みに尖塔が目立ち、石造りの城壁もある賑やかな町だ。空を飛んでいるのはカラスではなく竜の様な生き物の姿だ。


 ある日、僕は、揺り起こされた。この不思議な世界で。



 * * * * * ♪



 「キョウ、起きて。朝だよ」


 目を開けた僕の視界には、くすんだ色の天井をバックに神無月かんなづき沙羅さらの顔が写った。夢? まばたきをしてまぶたを擦る。もう一度目を開けると、カーテン越しの朝日に照らされた室内で神無月のくっきりした瞳に焦点が合った。


 「どうしたの? キョウ。不思議なものを見るような顔。悪い夢でも見た?」


 そう言って、神無月は眩しいほど綺麗な笑顔を見せた。長い黒髪をまとわり付かせた透き通るような白い肌は胸から下が薄手の毛布にくるまれている。軽く胸に添えた手、柔らかな逆光が、彼女の女性的なボディラインを際立たせている。


 「今朝は、市場に行って、食料品を仕入れようって言ってたでしょ。たまには、まともな食事がしたいもの。あなたの料理の腕前に期待したわたしが愚かだったわ」


 ベッドで横になっているその室内に全く覚えが無かったし、同級生女子の神無月と一緒にお泊りをしたなんて、そんな大胆な記憶も僕には無かった。しかも、同じベッドで? 何が起こってるの? これって、夢? ずいぶん、リアルな夢だけど。それとも、電波な彼女の悪ふざけ?


 「神無月……」


 僕がそう言った時、自分の声が自分の声ではないように聞こえた。変声期前の声というか、女の子の声に近い。


 「サラって、呼んでと言ってるでしょ。真名は、サラ=エファソニア=ミショル=カンナ」


 神無月、いや、沙羅は、僕の上唇に人差し指を軽くあててそう言った。その長ったらしい名前は、彼女の中二病設定として聞き覚えがあった。真顔でそう名乗って、僕の守護精霊だと言ってクラスメイトからドン引きされたこともある。


 「ゲルソニアの愚者って話、知ってる? ジャイルマでは、子供だましの教訓でしょ」


 と沙羅。ベッドの上に両手をついてのぞきこんできたので、黒髪のふさがふわりと僕の顔に落ちた。か、顔近いって……。あ、あの……、胸の谷間が目の前で、毛布から乳房がこぼれ出そうですけど……


 「げるそ……、じゃいるって」


 僕は、ベッドの中で半身だけ起こした姿勢で固まったまま、寝ぼけまなこをぱちくりさせるしかなかった。ドッキリか何かだろうか? あり得ない程手が込んでるんだけど。それとも、誘拐されたとか? 誰に? 何のため?

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