金庫は静かに眠る。
若狭屋 真夏(九代目)
地上げ騒動
S商店街の土地は地元の大地主高木吾郎氏が所有している。かつて漁業で栄えたY市には網元という漁業で大金持ちになった人が複数いて彼の父もその一人であった。時代が経つごとに落ちぶれてしまう家も多かったが高木家は地道に家を守り続けた。家だけではなく地域の中に優秀なものがいれば東京に進学させるという福祉事業なども行っていた。
福祉事業は戦後行えなくなっていったがS商店街の家賃はほぼただ同然の金額で貸し出していた。
吾郎氏は今年95歳になり若かりし日は東京帝大で商業を学び大手商社ではたらいたこともある。戦後は先祖代々の土地を守りまた地元の人間を守り生きている。
兄弟とは死別しており未婚のままでいた。
その高木吾郎氏が亡くなった。死因は「老衰」である。どの医師がみても間違えのない死因である。
さてお金持ちがなくなるとその親族がしゃしゃり出るのは世の常である。
兄弟とは死別したとはいえその子や孫は生きている
しかも誰もお金がほしいのだから仕方がない。
しかし親族が家探ししても遺言書や土地の権利書などが一切出てこない。
その日商店街会長の高木礼二が「深山探偵事務所」を訪れたのはそのことであった。
「私にとって遠縁ではありましたが吾郎は兄のような存在でした。インテリでスポーツマンでかっこいい男でした。一方で花が好きだったりして。。。年が年なので仕方ありませんがなんとかなりませんか?深山先生」
先日の些細な事件のおかげで翼は「先生」とよばれる存在になってしまった。
「うーん。困りましたね。私はその方にあったこともありませんし・・・・」
「わからなくてもいいんです。もしないのならば仕方ありません」
礼二はうなだれる。
そこに商店街の人たちが大挙してやってきた。
「礼二さん。商店街の土地を大手スーパーに売るって話があるんですが本当ですか?」哲矢が詰め寄る
「そんなこと誰が?」
「吾郎さんの甥っ子の英雄さんですよ。」
「あのバカ」礼二は思わずつぶやいた。
高木英雄は吾郎の弟の子で一族の中でもつまはじきにされる存在で吾郎の金を生前使い込んだため吾郎は以後会おうとしなかった。
「まあまあ。とりあえず深山さんお屋敷に行ってくれませんか?なにかわかるかもしれません」と取り持ったのが私日高護だった。
「私、目が見えませんし。」と断ったのを
「じゃあお前が先生の目になれよ」と哲矢たちに言われた。
こうして深山の助手として高木邸を訪れることとなった。
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