メゾン・ローズ

かぐや

第1話 203号室

 私は郊外に位置するところにある一軒のアパートである。名を『メゾン・ローズ』という。生まれてから30年くらいは経っているが、2年くらい前に改築工事を行いデザイナーズアパートとして生まれ変わることができた。生まれ変わる前には1部屋しか埋まってなかったが、改築して間もなく全室が埋まり賑やかな場所になった。


 改築前と一緒の住人は203号に住む老婆だけである。この老婆は、このアパートの所有者でもあり、管理人でもある。私は自分を華やかに生まれ変わらせてくれた老婆に感謝した。そして、私の周りを綺麗にしてくれることに、頭を下げたい思いである。しかし、私にそんなことはできるはずもなく、ただただ見守るだけである。


 老婆の生活は私の周りを掃除する時と買い物に行く以外は常に私の中で静かに暮らしていた。これは長年連れ添った夫が先に死んでから、ずっと変わらない。

 

 私はそんな老婆が心配である。ここ最近はどんどんと元気がなくなって、私の周りを掃除する頻度が減ってきてしまっている気がするのだ。

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