轍の星

傾いた番屋から岬へ抜ける廃道を、四つ足の曳く荷車が往き過ぎてうまれた轍、吃逆する天水にはりつめて今、星見盤だった。姦しい雷鳴らの行間で、人のように雪崩れる泥の輪郭が塞き止めた、この垂涎だけが星辰を明らめる、夜だった「その、やわらかな井户の底へ、私たちは梯子をかけて降りていった


偶有された体熱が潮気に融解し、あたためられた四囲の泥が膜をつくる。痩身の細く、くねくねと曲がりやすい箇所を差し出して、水音を立てず掻きまわる。表裏のない躯体が回転し、羅針盤のように無邪気だった。轍の只中にあっての漂流は、散開する光輝との交錯であり、交信であった「私たちは星が酿す呼气に浸かり、細胞を仄めかせて沉降しては浮上し、助数词のように觉束ない鞭毛をひくつかせて、不器用な泳法を夸示しあうのだった


孤塁としての軍靴が、いつしか黙然と畔に立ち止まる。昏い地熱を浅く穿つばかりの足跡は水を、星を留められるわけはなかった。涅色の羽根が織り上げた厚手の外套、留守番電話を抱きとめて心筋のように伸縮している。舳先に檸檬水のしみた裂傷を拓かれて、運指に繰られる灯油缶が浄い流体と鈍重な臭気を嘔吐した。その、卑金属めいた間歇泉の終端から、ひときわ鋭利な残響が点てられる。臙脂色の火球が、燦然と入水した「ひらめく星见盘が勃起する、番屋の倾きに用向きのある二つ足などいないと、思っていたのに


燎原。延焼。のがれるためには梯子をのぼらなくては、けれどそれはかなわない、梯子などはじめから、かけられていないから。私たちは惰弱な堤を、転げ落ちたにすぎなかった。斜面に刮げられた外殻の、泳ぐうちに滓となって沈められた点描を踏桟と取り違えるうちに、転げ落ちたことさえ忘れてしまったにすぎなかった「私たちは井户の底にすら达していなかった、ほんとうの底に星はなく、痒みをもたらす私たちが根雪のように坚牢な面持ちで堆积して、触角のむこうで私たち毛蛋になって


毛蛋になって私たち海鳴りの気胸とひそひそ話、放射性炭素年代測定の造語症が囂々と、幼生を受領した視覚野でわずかな落胆と期待をこめて、ふとく硬い踝と交尾したい足音ひとつ立てない身ぶりに、拝跪する、煮え端の果皮の沸騰と波うつ虹に焼かれる汀の白光を、裁決にのぞむ人のように亡失を抱きとめる、むず痒い手ざわりへの羨望をこめて「、私たち靴をはけない、私たち靴をはけない、私たち靴をはけない、私たち靴をはけない、私たち靴をはけない、私たち靴をはけない、私たち靴をは

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