闇の中で人間

空が

飛行機の庭なら

大地は

獣の飼い主

机からもその首輪が見えた


血肉を

削ぐ争闘で

燎原に

嵐が沸き立つ

冷たい街路樹を悪雷が引き裂いた


地の底に凍る星々の骸を

人間に容れてくれ


花を

啄む狼は

土を

潜む兎へ

食べ残しの弔花を手向ける


役に立たない

悲しみが

役に立たない

穏やかな嘆きが

獣たちの爪を育てる


飢餓の迎撃に咽ぶ友達を

人間に容れてくれ


もういなくていい

この大地にいなくていい


水平線の彼方では世界中の友達が他人の地平に火をつける

燃え盛る水と湧き起こる波濤

壊れた雫が砂丘を砕き渚を汚す

蒼褪めた蔦は躊躇いもせず真皮の裏から這い登る

草いきれに吼える犀角の所有格へ

この首輪を明け渡すため


膨れ上がる臍下に向けて纏足のような銃剣を刺し入れる

野花を啄む卑金属と同じ

質量の言葉だけが発明品だから

手帖の奥に忘れられた旅路の果ての交易品は

氷河の裂け目の音節に呑まれ

その机からは姿が見えない


羽虫のように蹲る兎を

人間と呼んでくれ

観念の王が嗾ける狼も

人間と呼んでくれ

それだけでは足りないなら

飛行機の迎撃に燃える空へ

卑金属の潜む見知らぬ大地へ

次はどの民族を差し出せばいい?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る