鍵の行方
若狭屋 真夏(九代目)
白杖をもった新参者
私の名前は日高護(ひだかまもる)Y市の商店街で「めだかや」という八百屋を営んでいる。一方で廃れゆくS商店街で商店街組合の理事を務めている。理事と言っても仕事は会合と称し酒を飲みながらおなじ商店街の店主たちとなにかいいアイディアがないかと自問自答している日々を過ごすだけの生活だ。
年は45歳独身だ。
まあ、私の紹介はそれぐらいにしてこの物語の主人公を紹介しよう。
彼女に初めて会ったのはそう去年の商店街夏祭りの時だ。
自慢ではないがこの商店街も全国の商店街同様年々店舗が減少している。
そのため商店街夏祭りを開き「ゆるきゃら」をつくろうという企画が上がった。
まあ、全国的にはやっているので採用したと言われればそれまでのことだが。。。
夏祭りの準備に忙しい前日に「ちいさな事件」が起こった。
それについて語っていくことにしよう。
夏祭りの前日は皆大忙しである。そんな日に彼女はやってきた。
話をひと月前にもどそう。
その日私と同級生で魚屋の大島哲矢と肉屋の山崎健司といつもの居酒屋「い佐治」で飲んでいた時である
「そういえばまもるちゃんきいた?」といったのは肉屋の健司だった
「なにを?」
「わが商店街にあたらしい店舗が開かれるそうだ」と哲矢は私の肩に手をまわした。
「今度はなに屋がくるの?また牛丼屋が入ってくるんだったら俺は理事として反対するぜ」と私
「あー前の牛丼屋は最悪だったからな。ゴミ捨ては守らない。夜中になっても音楽は流す。もう最悪」と哲矢
「なんでも探偵さんらしい」
「はー??」健司の言葉に私はあきれた。
「なんでも会長が東京で困ったときに助けてくれたそうだぜ」
「なんだろ?不倫調査とかするんだろ?問題だらけじゃん」
私の言葉に哲司はグラスに残った焼酎を飲み干すと
「それがそうでもないらしいんだ。」含みを持たせる。
それから無事商店街の書類をパスして今日この忙しい時にあいさつにみえるらしい
何しろ今日は忙しいので暇な私が対応することになった。
「どんなやつが来るか知らんが変な奴なら俺が会長に文句言って追い出してやる」
当時の私はそんな狭い心をもっていたのは実に恥ずかしいが事実である。
予定の2時半は30秒も過ぎているのにいまだ商店街の会合室(といっても使われなくなった店舗の二階)に来ないとはいささか無礼ではないか?
そう思ったとき魚屋の哲矢の奥さんの声が下から聞こえた。
「まもるー、いるんでしょ?」
「なに?みさきちゃん」
「あたらしい店主の方がご挨拶にみえてるわよ」とみさきは言った後に
「あ。ここ段差あるから気を付けてね」と小さな声を出した。
私が階段をおりると目の前にいたのは20そこそこの小柄な女性だった。
「あ。商店街の理事さんですか?私このたびこの商店街にお世話になります。深山(みやま)探偵事務所の所長深山翼です」
よく見ると白杖を手にしている。
「は、はじめましてわたし理事をしている日高護ともうします」
「ずいぶん背がたかいんですね?」
「え?」
「いえ。私が身長144センチでして上のほうから声が聞こえるのでおそらくは175センチから185センチだとおもいまして。」
私の身長は181センチ彼女の推理に度肝を抜かれた。
ちょうどその時事務所に魚屋の哲矢が入ってきた。
「たいへんだー」
こうして事件の幕は落とされた。
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