俺が魔法を使えるたったひとつの理由
葵
無能。
『今から約150年前、当時10歳の男の子が20代の男性6人を殺した。』このような事
件があった。
普通ではありえなさそうなこの事件だが、可能にした男の子、
後に知らされた、殺人方法は、、魔法。
初めて使われた魔法に希少な価値を感じた政府は、その榊田の血を、適合する5人の人間に輸血した。
その結果、5人に与えられたのは、
『魔法』と『5
『5血族』は
この5つの家で構成されていて、5血族からは代々、優秀な魔導師を輩出している。
5血族以外にも『榊田殺人事件』の後から、
魔法を使える者が現れていて、今では、魔法を使う生活が当たり前となっている。
・・・そして、魔法について学ぶ学校すら、出来ている。
魔法学院。
魔法が学べる学校で1番大きく、超エリート高校。数多くの1級魔導師を輩出していて、5血族は必ずここの高校を卒業している。
今年、その魔法学院に入学することになった1年次生の入学式が今日行われる。
俺、
「はぁ〜」
自分の現状を思い出すと虚しくなる。
「優、早くトイレからでろ。俺も暇じゃないんだ。あと数10分後には、仕事に出かけなければならない」
父さんか。・・・・・・父さんは1級魔導師。
・・・・・・また虚しく。
「・・・すぐ出るからもう少し待ってくれ」
父さんは返事をせずにトイレの前から立ち去っていった。
『ジャーー』
「すっきりした」小声でそう言い、トイレをでて、時間を確認するともう家を出ないといけない時間だったので、カバンを持って
「行ってきます」
少し強ばった声でそう言い、家を出た。
「当校の生徒としての自覚を持ち由緒ある行動を心がけて下さいね」
マイクを使い体育館中に響き渡った、入学式当日に校長先生が言いそうな言葉ベスト3を聞き終えると、すぐさま発表されたホームルームへと向かった。
緊張のあまり途中で道を間違えたが、皆より少し早めに出たためいいぐらいにたどり着くことが出来た。
周りには知らない人ばかりだった。
・・・・・・あれ?そのホームルームには一際目立つ女子生徒がいた。髪は金色で顔立ちはとても美しい。手足は細く男女共に惹き付けられるその女子生徒は入学式にも関わらず、1人席に座って本を読んでいた。
「初日からあんな異彩放つやついるんだな」
「あいつのことか?」
「あぁ、あの子はすごいな。」
・・・・・・ん?俺は誰と話した?
少し遅いタイミングでそう思い、後ろを振り返ると、「うわぁー!」後ろにいたのは、5血族のうちの1族、筑摩家の後継者、
「やっぱり、おもしろいなお前は」
尋常じゃないほど笑いながら褒めたのか馬鹿にしたのか分からないようなことを言ってきた。
「魁都。同じクラスだったんなら事前に言ってくれればよかったのに。」
「いや、俺もお前と同じクラスだったなんて知らなかったんだよ。今来てみたら、お前がいたからあっ一緒なんだって思ったのが同じクラスっての知ったきっかけだし。」
それもそうか俺も知らなかったんだし人のこと言えた立場じゃないな。
「ところで魁都。あの子のこと知ってるのか?」
「なんで?」
「いや、なんでって、知らないやつのこといきなり''あいつ''なんて呼ぶか?」
「は?呼ぶだろ」
うん。やっぱり魁都は人と少しずれてるな。
「でもな、優。残念ながらあいつのこと、知ってるぜ」
知ってるんなら、さっさと言ってくれればよかったのに。
「んで、あの子は何者なの?」
「ん?知りたいか?」
「知りたくなかったら聞いてないだろ」
「まぁ・・・・・・そうだな。・・・・・・あいつは留学生ってやつだな。ここからは少し長いが・・・・・・聞くか?」
「あぁ。聞く」
「即答か。あいつの名前は、シナン・クリスタ・マキナだ。出身はイギリスだな。そのイギリスの中でも相当な身分のお方''だった''しかし、あいつの姉、カシア・クリスタ・マキナがイギリス政府の重要人物を殺した。この話は優、お前も知ってるだろ」
あぁ、もちろん知っているとも。
魔法。それも、5血族となれば知らないやつはいないだろう。
日本とアメリカ、ロシアに、そして、イギリス。
この4カ国は魔法の使える国々の中で特に先進している国と言えていた。
しかし、今ではその先進国の中から、イギリスは消えている。
その原因を作ったのが、さっき名前の出てきた、カシア・クリスタ・マキナ。
カシア・クリスタ・マキナは、3年前『イギリスの秩序を保つ栄光の証』と
そのため、今は、イギリスを抜いた、3進国となった。
カシア・クリスタ・マキナは、今は行方不明となり、イギリスと3進国は、やけになって捜索中。
これがカシア・クリスタ・マキナの過去と現状。
しかし、そんな人物の妹がなぜここに。
「情報提供ありがとう、魁都。」
「・・・・・・あぁ。無理だけはするなよ。なんかあったら俺を呼べ。助けに行くから」
魁都は、俺になにか不安がある時すぐにこの言葉を出す。
無理はするな。俺を呼べ。助けるから。
この言葉を。
なんでなんだ。俺は5血族の一員だぞ。俺だって佐久間家の後継者なんだ!
俺は守る側なんだよ!
・・・・・・守られる側じゃない!
それでも今の実力ではそんなこと言えなかった。自分が弱いという劣等感と俺を弱いと言ってくる、魁都への怒りをかき殺し、
「あぁ」とだけ述べた。とても、悔しくて虚しかったが・・・・・・今はそれしか言えなかった。
その直後女の教師が入ってきて、
席に座るよう指示を出てきた。
騒いでいた教室の中は一気に静かになり、
興奮気味のクラスメイトは、緊張感を持ち、席についた。もちろん、俺も魁都も席についた。
「私の名前は、
そしてこの神楽様はお前らの、担任だ。私は、弱いやつ、見込みのないやつ、やる気のないやつはすぐに切り捨てる。捨てられたくなかったら強くなれ。前線に立ってこの世界を守られるぐらいに強くなれ。・・・そして、私を・・・」
生徒を威圧してるかのように思えた教師は、いつの間にか背中を丸めていた。顔は強ばってるし、肩に力も入ってる。
最初は緊張なのかとも思ったが、そんな顔じゃない。
何かに恐怖を感じているように見えた。
「・・・先生。このあとの日程は」
・・・さすがにこのまま放置は可哀想だからな、話題振らなきゃ。
「・・・・・・あぁ。この後の日程は、帰宅だ。寮の説明はみな受けてるはずだから説明する必要は無いよな。明日は今日と同じ時間までに登校。他の日程詳細は後ろの黒板に張り出している。見ておくように。以上」
持ち直したみたいだ。まぁよかった。
「・・・・・・佐久間、あいさつ頼む」
「あっはい!
気をつけ 礼!」
急に振られたから、慌ててしまいそう言うと、皆が合わせて、「ありがとうございました!」と言ってくれた。
「魁都。帰ろうぜ」
「すまない。今日は用事があるんだ。先に頼む」
「そうか。分かった、ならまた明日な」
「・・・おう」
魁都どこか申し訳なさそうな顔をしていた。
「おい、佐久間。先程は助かった。フォローさせてしまいすまなかったな」
その事について謝ってくるって割と悪い人ではないのかな。
「大丈夫ですよ」
「・・・・・・それはそうと佐久間。お前は佐久間家の後継者だというのに、未だに魔法を・・・・・・あまり使えないのだな」
・・・・・・また、またその話か。
皆俺に無能の言うのか。
いや、言われても仕方が無い。
なにせ、俺は無能なのだから。
自分に力がないのが悪いのだ
深刻そうに話す教師の顔など見れなかった。
見ていたのは斜め下。
絶望と妬みが募りすぎて爆発させたい。
「あなた・・・弱いの?」
そう声をかけてきたのは、
「・・・シナン・クリスタ・・・マキナ」
かけられた言葉に対しての疑問はあったが、そんなことどうでもいいぐらい彼女に話しかけられたことに驚いていた。
やっと正気を取り戻し、気になることを聞いた。
「どうゆうこと?」
彼女はこの質問に当たり前かのように答えた。まるで何かを知っているかのように。
何かを見透かしているかのように。
『だってあなた、強いでしょ?』
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