哲子67歳★恋して焦がれて乱れ咲き♪~哲子シリーズ①~
オブリガート
第1話 哲子、ナンパされる!
ある土曜日の昼下がりのことでした。哲子は暇で暇でしょうがありませんでした。
そこで、最近ソーシャルゲーム上で知り合った
ちなみにそのソーシャルゲームのタイトルは、『きらきら☆わたしの王子さま♪』。女性向けの恋愛シミュレーションゲーム―――いわゆる“乙ゲー”。
高岡さんは哲子が住む町からそう離れてない場所で暮らしており、現在ぴちぴちの大学三年生。二人はこれまでに数回ほどカフェでお茶をしたことがあります。
呼び出し音が鳴り続けることおよそ二分。高岡さんはいっこうに電話にでてくれません。哲子は諦めて
「しょうがない。天気も良いし、どこかに出かけるか」
哲子はベッドから起き上がり、さっそく身支度を整え始めました。
年々ファスナーの上がらなくなってきた水玉のワンピを無理やり身体に着せ、顔面にこれでもかというほどファンデーションを塗りたくり、真っ赤な口紅をぐりぐりとたっぷりつけました。
「うふ、いい感じ。二十歳は若く見えるわ」
全身鏡に映る自分の姿に十分満足すると、哲子はルンルン気分でお天道様の下へと飛び出して行きました。
向かった先は、札幌中心部、大通公園。
休日ということもあり、大通公園は多くの人々で賑わっていました。哲子は空いているベンチによっこいしょっと腰掛け、いったん手鏡で乱れた髪を整えました。
「ここに座っていれば、そのうち誰かナンパしてくれるわよね」
と、大いに期待しながら、かれこれ三時間ほど待ち続けました。
時刻は夕方五時。そろそろ腰が痛くなってきたので、いい加減帰ろうとベンチから立ちあがったその時でした。
「Hey!そこの彼女!俺とお茶しない?」
突如、白髪混じりの中年の男が声を掛けてきたのです。年は哲子より一回りほど下でしょうか。日焼けした顔にチョビ髭を生やした、なかなかの色男です。
「はい!是非!」
哲子は目にハートを浮かべながら男性の誘いを快く受けました。
二人は近くのカフェに入り、自己紹介も交えていくつかとりとめのない会話を交わした後、連絡先を交換し合い、六時半に解散しました。
そのダンディな男性の名は
哲子はアパートに帰宅するなり、さっそく隆治にメールを打ちました。
『隆治さん♪今日はありがとう^^次はいつ会える?』
文末には自分の歳の数(六十七個)だけハートマークをつけておきました。
哲子は送信ボタンを押し、携帯をパタンと閉じて胸に押し当て、一人でにやにやしていました。
数秒後、哲子の携帯から荒城の月(着メロ)が流れ始めました。哲子は即座に携帯を開き、画面に顔を近付けました。
しかし、それは隆治からの返信ではなく、メールが相手に届かなかったことを知らせるエラーメールでした。
どうやら隆治は哲子にデタラメのメルアドを教えたようです。
しかし、元来鈍感な哲子は、
「隆治さんったら、アドレスを間違えたんだわ。そそっかしいんだから~」
と呑気に笑っていました。
「きっとそのうち彼の方から連絡してくれるわよね」
しかし、一週間経っても隆治からの連絡はありませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます