七日間連載紀

おしり

プロローグ

「神様のような」という形容表現がある。

 説明すると、その人にとっての願い事とか、欲求だとかを都合よくポンポンと叶えてくれる人に向かって「まあ、貴方ってまるで神様みたいな人だわ!」と大袈裟に叫ぶのが正しい表現らしい。


 ともあれ、『まるで神様』という比喩が存在する。

ってことは神様ってのは全知全能で望みをなんでも叶えてくれるそんな存在なのか。

神様を信じていたら魔法のように欲求が満たされて、神様を信じていたら無条件に心が満たされる。なんて便利だ。



ところが、この「神様」というのは眉唾もので、そういう「卍全知全能卍」とか「†唯一無二†」みたいなそういうビッグネームの割にはものごっついポンコツなのだ。


例えば、「神様~っ。おなか空いたからなんとかして~」とお祈りしてみよう!

そうしたとき、何もないところからパンとワインが生まれることはあるかな?


答えはノー。水を張ったバケツを持って近所の自動販売機まで突撃して、自販機の下に水を流し込んで有象無象のゴミと一緒に500円玉が流れてくるのを期待したほうがマシだったりする。



まあ詭弁とはいえ確かに「バケツ>神様」のシチュエーションは存在しちゃうわけだ。


こんなふうに神様なんてのは結構頼りないものだ。

余りの頼りなさに存在証明書を貼られたり、「お前はもう死んでいる」とか言われちゃったりしてる。かわいそう。



ともあれ、神様に足りないのは、「本当に願いを叶えてしまう力」とバケツみたいに「確かに存在するという物質性」ではないだろうか?

その二つを備えてしまったものは、逆説的な言い方をすれば、もはや「神様みたいな」ものではないのだろうか?



──そういうものを、私は持っている。

 なんでも願いを叶えてくれる魔法のアイテム。そういうものを私は持っている。


これは、そのアイテムをめぐる、七日間の物語。

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