我らロッキーズ!

卯野ましろ

第1話 六曜、全部言えるかな?

「そろそろ今日が終わる……。当番も終わる~」

「お疲れ様」

「ありがとうトモちゃん」

「うわぁ、もうすぐオレじゃん!」

「何か面倒臭そうにしているけど……シャックの場合、特にすることないよね?」

「うっせーよ! てかブツに言われたくねーし! 似た者同士だろ、オレら!」

「五十歩百歩ね」

「ぶー、そんなこと言うな」

「ボクのことは良いよ、センショーお兄ちゃん。それより、もう時間……」

「あ、本当だ! ほらシャック、もう日付変わったぞ! アンと当番、変われ!」


 彼らはロッキーズ。六曜の六人である彼らは、いつも交代制で人々のために働いている。


「でもさぁ……六曜を気にしている人って、そんなにいる?」

「何を言っているんだ、ぶー子。いるよ!」

「だってさぁ……ボク、前に見たよ?」

「何を?」

「六曜を全て言えない人」

「ぶっ!」


 妹の言葉が効いたのか、センショーは口に含んでいた飲み物を吹き出した。そして他の者は、ざわつき始めた。


「ぶー子ちゃん、それ本当?」


 兄の口周りを「お兄ちゃん汚いよ」と拭いているぶー子に、トモは聞いた。


「うん。街中で暇そうな男子二人組が『六曜言えるかな』やってた」

「どんな遊びだよ」


 淡々と語るぶー子に、ブツはつっこんだ。


「あのね、まず男子Aが『オレの姉ちゃん、この前の大安に結婚したんだ』って話を始めたの」


 一同は「うんうん」と、ぶー子の話を真剣に聞いている。


「そしたらね、男子Bが意地悪そうに『お前、大安の他に六曜、知ってんの?』って男子Aに聞いたの。するとAから驚きの返答が!」


 ここで固まる一同。そして、ぶー子は続けて言った。


「……六曜って、何?」


 ……ヒュウウウウウ……。

 彼らは今、屋内にいる。それなのに何だか、冷たい風が吹いたようだった。

 

「アハハハハハハ!」


 だがしかし、一人だけ大爆笑していた。それはシャックだった。


「何で笑うんだ、シャック!」

「だってよぉセンショー、そいつ六曜を全て言えるどころか知らねーじゃん! 逆にウケるわ」

「お前がいかに縁起悪いかも知られていないから、そりゃ嬉しいよね」

「何だと!」


 またブツがシャックにケンカを売ってきた。


「で、でもでも! 前に私が当番だった日、作家志望の人が郵便局に急いでいるのを見たわ!」


 雲行きが怪しくなると、急いでアンが話を始めた。


「あー、あのクソワナビのことか。それなら僕も知ってるよ。あいつでしょ? 自分の実力を棚に上げて、最近六曜の他にも占いに頼るようになった奴。結婚を控えている人らと、あいつくらいじゃん? 六曜にこだわっているのは」

「それでも良いじゃないかブツ! 俺たちを頼ってくれる人が存在しているのだから!」

「……頼る人が多ければ多いほど、僕やシャックはますます嫌われるけどね」

「あっ……」


 また凍てつく空気。そして、それを打ち破った者は……。


「だからこそオレは明るく生きてんの! お前と違って!」

「それが痛々しいんだよなー……」

「うるせーっ!」

「やめろ、二人とも!」

「はぁ~、余計なこと言っちゃったかしら……」

「アンちゃんは何も悪くないって」

「悪いのはお兄ちゃんだよ。本当にお兄ちゃん、バカなんだから」

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