雨の隙間に
カゲトモ
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「わぁ、すっごい雨ですよ」
扉を開けて外を覗いてみる。屋根より向こうの道は白く霞んで見えるほどの豪雨だった。天井から吊ったハンギングプランターは雨風に煽られて左右に揺れている。
「わぁ、本当だ」
覗きに来たヒガシノさんはどこか楽しそうにそう口にした。なんで? 俺だったら憂鬱で仕方ないよ。
「これはどうやっても濡れてしまいますね」
「大丈夫ですよ」
バケツをひっくり返したような雨に心配して言うと、裏腹に彼女は笑って答える。
「傘持っていますから」
そう言って鞄の中から傘を取り出す。いやそれ、折り畳み傘じゃないの。
「それじゃぁ絶対に濡れてしまいますよっ」
「えー、大丈夫ですよ。走れば」
走ればって。その時点で足元はずぶ濡れ決定じゃないの?
時刻は深夜零時少し過ぎ。今日はずっと雨が降っていたから店内は結構静かだったけれど、今はジャズと雨音、それから俺とヒガシノさんの声しか聞こえなかった。
外は大雨。これは俺の置き傘(八十㎝ジャンピング傘)でも確実に濡れるほどの雨だ。吹き付ける風も強いし、もう少し雨宿りをして行った方がいい。
「まだお時間に余裕があるようでしたら、もう少し雨宿りして行かれてはいかがですか?」
女性だからあまり遅い時間まではいてもらえないけれど、せめてもう少し雨足が弱まるまで。天気予報でも深夜に止むって言っていたし。
「温かいお茶でもどうです? 私、こう見えても紅茶を入れるのは得意なんです」
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