第6話 初めてのエルフ
服を仕立てる。
翌日、そう言ってドラールは僕を連れ出した。
着いたのは「Tetramide」と看板を掲げる小さな店。
「翔平にはどんな服が似合うかなぁ?」
店名に聞き覚えがありながらそんな立ち話をしているとき。
「薬屋、俺の店の前で何してる。」
不意に声をかけられる。
「……誰だ、ソイツ。」
長身で線の細い褐色の男は僕を一瞥してドラールに問う。
「……今回の、██だよ。」
ドラールは一瞬躊躇って、でも切なそうに答えた。
突発的に酷い頭痛が起こって聞こえなかったけど。
「あぁ、成る程。可哀想に。」
尖った耳にチャラチャラと着けたピアスを弄び、ジレを風に揺らしつつ男は僕を哀れんだ。何故、
「彼はセリン。ダークエルフでちょっと無愛想だけど、腕は確かだよ。」
ドラールはすかさず僕に耳打ちをする。
「薬屋?今ミアン帰って来るからここで待ってろ」
セリンが小屋の奥から叫ぶ。
「はーい、行こっ、翔平。」
「薬屋、ほら、紅茶。」
セリンが紅茶を出してくれる。
「角砂糖2つだったよな?お前のは分からんから、取り敢えずストレート。」
口に合うといいんだが、と言って丁寧に僕らの前に紅茶を置く。
「ありがと!」
「ありがとうございます。」
ドラールに続いて御礼を言うと、セリンは微笑んだ。
笑顔初めて見た。
「タメ語でいいよ。そんなかしこまんな」
言いつつ自分も椅子を引いて座るセリン。
紅茶に口をつけると、フルーティーな香りがただよってくる。
「あ、薬屋っていうのはね、私がお薬作ってるからだよ。
薬草ゴリゴリーって。」
へぇ、と言いながらまた一口二口飲む。
美味しい。
「どうだ?花屋に仕入れてもらったんだが。」
セリンは自分も飲みながら言う。
「おいしいよ、流石セリンって感じ。」
「流石って言うべきは花屋だろう?」
「そうかな、リナも流石だけどセリンもだよ?」
「はいはい、ありがとな」
そうぞんざいになりながらもセリンの耳は赤みを帯びていた。
「花屋っていうのは、この辺のお花屋さん。タイム・リナロールって言うんだけど、みんなリナって呼ぶんだ。今度行こうね。」
ドラールは僕にそっと耳打ちをする。
僕が頷いた、その時だった。
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