第3話 tattoo
家に戻るとドラールはご飯にしようか、と微笑んだ。
「用意するね。そこで座ってて」
ドラールは食卓を指差す。
腕を伸ばし、袖が突っ張る。
ちらりと見えた手首は、黒かった。
驚いてドラールの顔を見る。
「なぁに?」
微笑んだまま、首を傾げられる。
「なんでも、ない。」
忘れようと頭を振る。
忘れる?忘れられるはずがない。
歪。
キッチンに立つドラールをボーっと見つめる。
スカートから伸びる白い足がどこか官能的だった。
ドラールが調味料を取る為屈む。
白に混じる、黒。
いつもはスカートに隠れる場所。
驚愕し、目が離せなくなる。
「翔平のえっち。」
いつのまにかこっちを向いていたドラールが言う。
ふざけた様にむくれている。
「あ、ごめん」
まぁ、別にいいんだよー、と歌う様にドラールは踵を返す。
タトゥー。
細い足に絡みつく黒は、タトゥーのそれだった。
あんな小さい子が?
そもそも青少年保護法で禁止されているはずで。
法が、機能していない?
ドラールの話では長い間ここにいるようだ。
あの就寝から、どれくらい経っている?
疑問、疑問。
答えも乞えない疑問が思考を埋める。
「翔平?要らないの?」
声に我に帰る。
立派な朝食が並んでいた。
「あ、食べる。」
クロワッサンに齧り付く。
ドラールが千切り千切り、上品にパンを口に運んでいる。
パンは咀嚼され、飲まれ、溶けた。
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