帰ってきた人形

ツヨシ

第1話

コンビニに行っての帰り、マンションの玄関になにかが落ちていた。


拾い上げて見るとそれは人形の右腕だった。


――なんでこんなものが落ちている?


マンションを出る時には、人形の右腕など落ちてはいなかったはずだ。


子供がここで人形を乱暴に扱ったのかとも思ったが、今は深夜と言っていい時間帯だ。


子供がこんな時間に遊んでいたとも思えない。


俺は人形の腕を床に落とすと、部屋に向かった。


――それにしても……。


あの人形の右腕、どこかで見たような気もするのだが。



部屋に着くと、部屋の前の廊下になにかがあった。


見ればそれは人形の左足だった。


――こんなところにもこんなものが……。


拾い上げてみると、右腕同様にやはりどこかで見たような気がする。


俺は考えた。


しかしなにも思い出せなかった。


とにかく人形の左足なんかが部屋の前にあるのはなんだか気味が悪いので、俺はそれを遠くに投げた。


そして部屋に入った。


部屋に入り、電気をつけると途端に思い出した。


あれは真知子がくれたものだと言うことを。


その当時付き合っていた真知子と言う女が、誕生日プレゼントとして俺に手渡ししたものだ。


男に人形のプレゼントなんてと笑ったものだが、その時は幸せだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る