窓に映る景色、君の横顔。
渡良瀬りお
プロローグ
Q,そういえばお前、なんで学校辞めたの?
A,・・・まあ、なんか面倒になって
Q,これからどうすんの?
A,バイトしてるし、とりあえずはまあ
Q,お前さ、いつまで親の家に住むつもりなの?
A,バイトで金が溜まったら出ようとは思ってるよ
Q,結局プラン無いんじゃんか。それでどうやって暮らすんだよ
A,一山当てて・・・その為に学校辞めたってのもあるし
Q,あ~・・・。小説書いてるんだっけ
A,まあ・・・うん
Q,ネットで多少人気あるからって理由で学校辞めたんだ
A,別にそういう訳じゃ無いけど
Q,この際だから言うけどさ。皆お前の事馬鹿にしてるよ?
A,・・・そう、なんだ
Q,だって馬鹿じゃん。お前のやってる事意味わかんねえから
A,まあ、別にどう思われても仕方ないと思ってるけど
Q,はあ。お前さ、そういう逃げ方めっちゃダサいから
A,別に逃げてない・・・けど
Q,逃げてんだろ。まあもうどうでもいいけど。今後お前と関わる事も無いだろうし
A,・・・まあ
Q,・・・お前、最後まで格好悪いのな
A,・・・
・・・分かってるよ。
そんな事くらい言われなくたって気付いてるよ。
・・・俺は馬鹿だよ。
† † † †
「すいませーん」
「はーい!11番オーダーお願いします!」
「はいっ」
「お待たせいたしました。ご注文お伺い致します」
「このサーロインセットと――」
「オーダー入ります!サーロインセット250g、チキンドリア、ミネストローネ、オールワンです!サーロインセットパンでお願いします!」
「失礼します。大変お待たせいたしました、こちらが――」
「ありがとうございます、お会計御一緒でよろしかったですか?」
「ありがとうございました!」
――――
――
「上がります、お先に失礼します」
「はい、お疲れ様。あ、
「・・・はい。大丈夫です」
「用事あったらいいんだけど、任せてもいい?」
「・・・はい」
「それまかないだから、持って帰ってね。それじゃあお疲れ様」
「はい、失礼します」
「今月のバイト代が6万、生活費が3万、家に入れるお金が3万・・・。手元に残るのは0・・・か」
・・・分かってる。
「・・・もうここで2年働いてるけど、そろそろ別の収入良い仕事見つけないと暮らしていけないな」
・・・言われなくとも気が付いてる。
「あ、そういえば小説一週間更新してなかったな・・・。せっかく読んでくれてる読者さんが逃げちゃうな・・・」
自分が、果てしなく。
「異世界物の方はすぐ書けるけど学園物の方は・・・もう少し構成練ってからじゃないと難しいかな」
愚かだという事くらい。
「・・・学校なんて一年前に辞めたよ。学園物なんか分かる訳ないんだよ。・・・女子の話し方仕草振る舞い表情、全部忘れたよ。・・・もう、分からないんだよ・・・」
俺は確かにあの時後悔なんてしないって、そう言って学校を辞めた。
「・・・辞めなきゃよかった」
親と口を利かなくなるまで喧嘩して、その挙句に辞めた。
「学校行ってないんだから毎月家に3万入れろ。それは最低限払ってもらう」
親の提示したその条件を俺は呑み、バイト以外では部屋に閉じこもった。
当然、家に住んでいるだけで、ご飯や携帯料金などの面倒は見てくれない。
・・・6万じゃ、到底足りない。
小説の賞レースに何度か応募するも一次選考で悉く落選。
それでも書くのを辞めないのは、創作が楽しいからだ。
ちょっと小説サイトでランキング上位に入ったからって調子乗って、俺なら文庫化出来る、だなんて言ってたのが恥ずかしくて仕方がない。
それでも、一山当てたいという願いは今でも持っていた。
「・・・よし、書こう」
失敗した過去を根に持つのはやめよう。
失敗したと分かっているから余計に辛くなるだけだ。
失敗・・・したな。
「・・・え、は?なんでだよ」
翌朝。
「だから光熱費と水道代。お前の所為で上がったんだから1万5千円プラスするのは当然だろうが」
見下した様な顔で父がそんな事を言い出した。
「・・・いや、それを含めて3万って話だっただろ。あと俺だけがそんな使ってる訳じゃない」
「なんだお前その口の利き方はよ。あ?お前学校辞めて親の脛齧って、それでここに住んでるんだろうが。それを払えねぇんなら出てけばいいだろうが」
確かに迷惑は掛けてるけれどその言い草は卑怯じゃないか。
「俺の飯代とかどうすればいいんだよ。そこにそんだけ持ってかれると生きていけないだろ」
「じゃあ死ね。出てけ」
・・・これが親の言う事かよ。
”あ、もしもし蓑野君?今もう5時過ぎてるんだけどどこで何やってるの?昨日確認して帰ったよね”
「・・・すみません」
”謝罪じゃなくてさ。いいから早く来てくれないと困るんだけど。こっちは蓑野君を信用してシフト入れてるのにそう言う事されると今後入れれなくなるの分かる?”
「・・・水野さん、俺バイト辞めます」
”・・・はあ。話になんないね。何それ?開き直ったのか何なのか知らないけどさ。辞めるんだとしても顔合わせて話するのが常識でしょ。何考えてるの”
「・・・はい」
”はいじゃなくてさぁ!ねぇ!おかしいでしょって言ってんの分かってる!?仕事なんだよ!?そんな半端な気持ちでやってんじゃな――”
プー。プー。
「・・・あ。家にパソコン忘れてきた。・・・最悪だ」
今は11月。ここ北海道の外気温は3度程度。
寒い。
「でも鍵は取り上げられたし・・・帰れないな・・・」
飛び出してきたから格好も厚くない。
寒い。
「・・・まあ、帰るなんて言葉は似合わないか。家出じゃなくて勘当だから」
「これからどうしようかな」
あては無い。友達も居ない。親戚にお世話になる事も出来ない。
「アイツが言った通り、死んでもいいかもな・・・なんちゃって」
「・・・なん・・・ちゃって・・・」
俺は、涙が出てしまった。
止まらなかった。
自ら生きづらい選択ばかりをして、他人に迷惑を掛け続けた挙句、出てきた答えが『死』、だってさ。
馬鹿にも程がある。
馬鹿だ。馬鹿すぎる。
こんな自分が嫌いだ。誰にも見られたくない。恥ずかしいじゃ済まされない。
消えたい。死んでしまいたい。誰の記憶からも跡形と無く消え去りたい。
死にたい。
死にたい。
「・・・死にたくないんだよ・・・」
学校を辞めず、普通の生活を送っていれば良かった。
小説家になるだなんて夢、とっとと捨てて現実を見れば良かった。
友達や家族の忠告を真面に聞いておけば良かった。
・・・分かってる。いや、分かってた。
言われなくたってそんな事くらい。
気が付いていた。
・・・俺は馬鹿だ。
「・・・ハンカチ、使う?」
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