幻鬼譚 1.

 メビウスの輪を知っているだろうか。

 簡単に言えば紙をつなげて作る八の字の形をした鎖だ。これがなかなか面白い仕掛けで、紙の面を鉛筆で辿っていけば同じ所に戻ってくるという特徴を持っている。

つまりは、同じ所をぐるぐる回って元いた地点に何度でも戻ってくるというものだ。天を自由に飛行していたつもりが仏の手の平で踊っていたかの天竺を目指した猿の物語のように、前に進んでいると自分では思っていても同じ所で惑っているだけだった。

 単純なくせにやけに示唆に富んだ教訓に満ちた工作であるなと俺は思うわけだ。そんなことを思うのは俺だけかもしれんが。

 さて、このような話を思い出したのは一重に俺のとある失敗談のためだ。

 失敗談。最強として名を馳せる俺だが最強とはイコール完全無欠ということではない。むしろ弱点、欠陥だらけの存在が俺だ。そう、欠陥に欠落。

 これは普段偉そうな口をききながら自分の欠落から目を逸らしていた俺の手落ちから起きたことなのだ。

 これから語るのは最強の怪物、鬼である俺こと赤江あかえつくるの失敗談。

鬼が主役の地獄巡りの物語である。

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