第102話 黄金の獅子
扇の滝と三本首の崖。隣り合ってそびえ立つその二つから、ノイルバギーはかなり離れて止まっていた。機械獣の影を捉えたからだ。
「キョウリンチョウに似てるけど、一回り大きいね……三本首の崖にいるのはゲイドラコンドル。間違いない」
ノイルバギーの上で望遠鏡を覗くリラ。
「ふう。近付く前に気付いてよかったね。二体同時に襲ってきたら、かなりキツかったよ」
「だけど、それじゃ近付けないじゃんかよ。どうすんだ?」
イザックがそう言うとナヤは発掘記を取り出しながら答えた。
「大丈夫です。あの二か所はただの目印。二つを直線でつないだ延長線上に、古代の大都市があります。その一角に黄金の獅子を作った兵器開発会社の本社ビルがあるんです」
「あの二体の機械獣は無視していくわけか」
オスカー。
「闘わないに越したことはないが、何となく拍子抜けするな」
そう言って助手席に乗り込む。イザックが運転席へ、リラとナヤがコンテナに乗り込み、ノイルバギーは出発した。
*
「止めて!!」
助手席のリラが大声を出した。イザックは急ブレーキを踏む。
「何だよ!」
「降りて! みんな降りてー!」
そう叫んで、ノイルバギーから飛び降りるリラ。他の三人は、わけも分からずとにかく飛び出す。
「何だって聞いてるだろ?!」
「何事ですか?!」
「何か見つけたのか?」
リラは、ノイルバギーの進行方向左前を指さした。全員息を呑む。
リラが指さした遙か先、おそらく地平の数十キロ先には、金色に輝く巨大な機械獣の姿。ゆっくりゆっくり、一歩一歩大地を踏みしめながら歩んでいる。
荒々しさと気品を併せ持った顔立ちに、猛々しくも慎ましやかな鬣。そして、筋骨隆々でありながら滑らかな体つき。まさに機械獣の王と呼ぶにふさわしい。
「黄金の獅子……!」
リラがつぶやいた。古い書物に存在が記されるのみだった、伝説の機械獣が、今、リラ達の視線の遙か先で悠々と歩いている。
全長三百メートル近くあったブルービーストのディエンビと同じか、体積は一回り大きいかもしれない。一歩足を地面に降ろすたびに、大きな砂埃が上がっている。
「発掘記によると、黄金の獅子は一か月ごとにねぐらを変えるそうです。さっきまでノイルバギーの音のせいで聴こえませんでしたが、今は足音がしっかり聞こえます」
ナヤがそう言いながら耳に手を添えた。
「ですけど、足音しか聴こえません。体の金属が擦れる音が全く……。何か秘密があるんでしょうね」
「秘密って何だ?」
イザックが聞くとナヤは首を横に振る。
「全く分かりません。でも、これから行く古代の大都市『ネオドバイ』に、その秘密も隠されていると思います」
四人は暫く黙って小さくなっていく黄金の獅子を見つめ、リラの「行こう」という一言でノイルバギーに戻った。
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