第91話 二週間前 - アッタ・ヴァルパの話




 二週間前、アッタ・ヴァルパが話したのはこんな内容だった。


「黄金の獅子は、金色に輝くライオンの姿をしている、巨大な要塞のような機械獣だ。全ての機械獣の母であり、司令塔でもある。機械獣は、黄金の獅子の半径五百キロ内でしか活動できないよう作られている。機械獣がアストロラにしかいない理由はそれだ。大昔、機械獣は地上で暴れていたが、東の国から来た旅人たちによって、その多くが元々生息していた『地下世界』へと戻され、封印された。『変異体』というのは、黄金の獅子の命令を受けて破壊活動を行う、兵器としての機械獣の本来の姿だ」


「地下世界の存在は、私も聞いた事があります」

 そう言ったのはナヤ。

「国家指定厳重機密に指定されていて、何人なんびとたりとも入ってはいけない事になっていると聞きました」


「ああ。地上とは桁外れに危険だからな。黄金の獅子を狩りたいなら、そこに行くしかない」


「あなた達は生きた部品を持ち帰ったって聞いたけど、どうやって?」

 リラ。一言一句聞き洩らさないよう、集中している。


「七年に一度の『自己メンテナンス』の時期を狙って黄金の獅子の元へ向かった。この時期の間だけは、黄金の獅子は機能を停止する。たどり着くまでさんざん苦労したが、何とか手に入れ、持ち帰ってきた。もし黄金の獅子が動いていたら、とてもじゃないがそんなことはできなかっただろう。それが二年前の話だ。つまり、次の自己メンテナンスまで、あと五年ある」


「そんなに待てないな」

 と手をモゾモゾ動かしながらオスカー。イザックの顔を見る。

「ああ……。そうだよな。お前もナヤも」



「もしすぐに行くなら、『いつでも逃げ帰れるよう』準備を怠らない事だ。死にたくなければな」




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