10話 アグネスさんの疑問
「ルシオ・マリアローズ、メイド道三級に合格で異存はありませんか?」
「文句無しの100点満点さね、異存はないよ」
これはお祝いですね。マリアが好きな甘いお菓子を作りましょう、リーリエが以前、おやつとして作ったカンノールをマリアは満面の笑みで食べてましたので、あれを前に作った時よりもクリームを増量して作りましょう。
「私もです、ですがそれだとお披露目が早まりますね」
私はキルスティの言葉でその問題がある事を思い出しました。.
メイド姿のお披露目、自らの師と共に最初に仕える主に挨拶をするというメイドなら誰しもが通る通過儀礼、マリアもそれをする必要があります。
マリアの場合は、メイド服を着てお客様の前で挨拶をするのですが。
しかし本来の予定だと再来年でした。
マリアの予想外な
マリアは自己評価の低い子でしたから修得は出来ていないと、メイド道の修練はまだ早いと固辞しましたが結局、二回も手首の骨を折られて命の危険を悟ったらしく、三日後には無意識下でも魔力の制御が出来る様になっていました。
本人は気付いていませんが、一般的にマリアの到達した領域はよく修練を積んだ者だけが至る事が出来る領域、あの子の才能は
何より
メイド道に関しても元から物腰の丁寧な子で基本が出来ていました、そこに多少の本人が気が付かない内にメイド道の修練を行わせた事で基礎は完璧になっています。
途中で気付かれると思っていましたが、ベティー並みかそれ以上の天然だったのでこちらが伝えるまで全く気付いていませんでした。
そして予想通りと言うべきか、それとも予想外と言うべきか、マリアは料理に関する技術はとても高く、それこそ並みの料理人よりも上です。
生前から自分の事は自分でしていたと言っていました、なので多少なれど料理は出来ると思っていましたが、今回出した試験の内容は大抵の者は工夫を凝らしたサラダを出す程度、それに対してマリアが出した料理は南部で食べられているサラダと似た要素はありましたが自分の持っている知識を生かして、異世界のこちらとは異なるサラダを作って見せました。
おや、気付いたら私はマリアを褒めちぎっていました。
本人の前で言うと恥ずかしがって顔を真っ赤にします、あの表情は大変可愛らしいので機会があればまた褒めちぎりましょう。
「まあ、お披露目をしても手伝いは夕方までだね」
「子供の夜更かしは体に悪いですから、何より時間になると自然と寝る子ですし」
キルスティも言った通り、あの子は夜更かしが苦手です。
時間になると自然と眠気に身を任せて寝始めます。
すると店に出るのは16時から18時までと言う事になります、19時から20時の間には必ず眠りますから、当面は準備に徹してもらう事になります。
「今後の方針はメイド服を完成させる事、マリアの使う調理器具を揃える事、仕事の流れを覚えてもらう事、で良いでしょうか?」
「そうさね、それでいいね」
「異存はありません」
さてそれでは工房の方に連絡を入れないといけませんね。
おやそう言えば忘れていたことが一つありましたね。
あまりにも自然過ぎたので特に疑問に思っていませんでしたがとても重要な事です。
「マリアは男臭くありませんね、生前は殿方だと言うのに……」
「ぶふぁ!急に何言いだすんだい!?」
「そうですよ、副女将!?」
二人とも盛大に飲んでいたお茶を吹き出してしまいました、せっかく王都の友人に頼んで送ってもらった東部産の最高級でしたのに……。
「生前と同じ喋り方なのはあの子の性格から考えて分かりますが、ですがあまりにも自然体で女性であることを受け入れているみたいなので」
「いや、あれは忘れているだけさね。天然だからね、時々気が付いては戸惑ってると思うよ」
「ですね、お参りの時に少し悟った様な顔をしていました」
言われてみれば、だとすると生前は女性に嫉妬され男性に好意を抱かれていた可能性があります。
王都の女性の間で流行っている恋愛小説には確か男性同士の恋物語がありました。
王室に居た頃は同僚のメイドたちが読んでいたので私も読んだ事があります、その中の登場人物にマリアの様な物腰の丁寧な優しい好青年が強気な男性に組み伏せられている話がありました。
マリアは別の意味で辛い人生を送っていたのかもしれません。
それと男性特有の力で解決するという考え方は好まないのかもしれません、理性を優先する所がありますしそれもあの子の可愛らしさに繋がっているのかもしれません。
「あとあれだ、ベティーの事が母親の事が大好きでリーリエを慕ってるから、自然と女性らしさに染み付いちまったのかもね」
確かに、マリアは何かとベティーやリーリエと一緒に居ます。
それなら二人の物腰が移るのも納得がいきます。
ですがこの先、異性とのお付き合いが必要になります。
あの子にとって肉体的には普通でも精神的には同性愛になります、今の内に女性としての心構えを教える必要があるかもしれません。
肉体的な同性愛も推奨はしませんが必要なら考えるべきなのかもしれません。
まあ、お嫁には絶対に出しません。
それは私だけじゃなく淑女の酒宴に身を置くもの総意ですから。
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