10話 お引越し、お引越し
僕の記念すべき最初のお仕事、それは僕とお母さんが使っている部屋のお掃除だ。
今使っている部屋はお店の二階、階段を上がってすぐの部屋なんだけどここは本来、従業員の休憩室で、僕が生まれるのに合わせて休憩室を育児室に応接室を休憩室に改装していた。
僕は三歳になりしっかりしているという事からお店の裏手、中庭を挟んだ先にある宿舎に移動する事になった。窓から見える両隣の建物はレンガ造りなのに宿舎は木造、だけど簡素で堅実な造りをしていたまるで学校の校舎の様だった。
今日から僕はあそこで生活する、あれ?そう言えば僕は今までお店から出た事がなかった。
お風呂とかは開店前に一階の裏口近く、厨房や食糧庫の先の右側にシャワー室があってそこで体を洗っている、左側はトイレでお客さんも使う為か割と広い。
中庭には一度も出た事がない、窓から外を眺める事はあっても出た事がない。
お母さんや皆からは危ないからという理由で外に出ない様に言われている、だから特に疑問も持たずにいたけど不自然だ、地球だと僕くらいの歳なら親同伴で公園に遊びに行ったりする、何よりお日様を直接浴びないと健康によろしくない。
まあ、皆が帰って来たら部屋の移動や掃除で中庭に出る事になる。
あのヒポグリフも特に悪さをしている訳ではないし、今日のお引越しを終わらせたら中庭に出ても良いと許可が出る筈だ。
「みんな、早く帰って来ないかな……」
時計を見ると時刻は10時前、従業員総出で荷物の受け取りに行って約1時間くらい経った。
何で総出で荷物を受け取りに行っているのかと言うと、実は4日程前に街道で魔物が目撃されたからだ。
その話を聞いた時に僕は最初「魔物がいるとはファンタジー」と驚いた。
ただそれが原因で魔物が討伐されるまで街道が一時的に封鎖されてしまい、定期便が遅れてしまった。
3日前に届いているはずの荷物と今日届く予定の荷物が纏めて来た事から何時もなら2,3人で受け取る荷物を従業員総出で運ばないと行けなくなり、僕は大人しく一人でお留守番をしている事になった。
一人でお留守番、だけど僕は寂しいという気持ちより初めてのお仕事が待ち遠しくてワクワクしている。逸る気持ちを落ち着ける為に勉強をしたり、一階と二階を行ったり来たりしているけど、全然気持ちが落ち着かない。
待ちに待った日でもあるし、初めてお店の外に出る記念すべき日でもあるからか本当に落ち着かない。
よし、普段は行かない場所に行ってみよう。
二階に上がってすぐの所に僕とお母さんが住んでいる部屋がある、隣に休憩室、事務所、物置と続いて行く。
物置にはお店で使う日用品や色々な物が置かれているらしい、入った事がないから詳しくは知らない、なので待っている間に入ってみる。待っている間はすごく暇だから仕方がない、それに入ってはいけないと言われていない。
冒険みたいで少し心が躍る、事務所にも入ってことはないけど大切な書類とかがある筈だから勝手に入る訳にはいかない、だけど物置なら問題ない筈だ。
二階に上がり真っ直ぐ物置へ直行、さあ皆が帰ってくる前に全てを済ませないと!
ガチャ…ギイィ……。
うわ!?下から物音、誰か帰って来たのかな?冒険は失敗に終わったという事か、次の機会は必ず成功させよう。
帰って来たのはお母さんかリーリエさんかな、僕が一人だけになる事を最後まで渋っていたのもお母さんとリーリエさんだった、ある程度目途が立ったから先に帰って来たのかもしれない。
運び入れる準備の為かもしれないし、よし手伝いに行こう。
僕は駆け足で階段まで向かい、一階に下りて行く。
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