家族旅行は、異世界で✨

ハッピー

第1話




家族旅行をしたいある家族のお父さん。


娘が小さな時を思い出し、

久しぶりに行こうかとパンフレットを持ち帰る。


テーマパークや、東京やら、安めの海外旅行、、

きっと何処かにはヒットするはずと、お父さんは淡い期待をしていた。



「、、はぁ⁈

家族旅行とか、、。

意味わからないんですけど、、、。」


大学の娘は、夏休みはバイトに、遊びに、サークルにと忙しいらしい、、


家にいる間、スマホかTVしか見ない目が、

この日は、久しぶりに父を見た長女・ゆきちゃんだった。

今年で19歳。

順風満帆の彼女の人生は、まだ始まったばかりで忙しいのだろう、、。

若いゆきちゃんは、しょぼくれたお父さんとは、旅行には行きたくないらしい、、。



いやいや、、。

ママなら一緒に行ってくれるだろぅ、、


お父さんは、淡い期待を抱いて、台所で夕食の片付けをする、ママに声をかけた。

恋愛結婚を経て、昨年結婚20年目を迎えた、

ママのさきちゃんだ。




「、、この忙しいのに、、旅行、、???💦


しかも家族で⁈

うーんん、、

、、ゆきちゃんとなら、行きたいけど、、パパとはなぁ、、。」


ママの心の声は、口を通してハッキリと、

パパの心を突き刺した。


「てかさ、、。

わたし、友だちと行きた〜い✨

ミッキーに会いた〜い✨」

ゆきちゃんは、背中まで伸びた真っ直ぐな髪を、

ピンクの髪留めで、ひとまとめにしている。


昔、炊事をしていた奥様方が、服の袖をまくる時に留めていたゴムに似ている。


それを、ゆきちゃんに言ったら、

「、、シュシュだよ、、。

、、信じられない、、。」


ゆきちゃんは、第何回目かの思春期らしく、、

お父さんに冷たい、、。


だからこその、家族旅行だというのに、、。


家族との気持ちの溝は埋まらなかった、、。



「ニャァ〜ん✨」

ディズニーランドのパンフレットを、

テレビの前のテーブルで見入るゆきちゃんに、黒猫がすり寄った。


半年前から飼っている、一歳になるホノちゃんだ。


野良猫出身の、女の子で、大学生になったばかりのゆきちゃんが、家のそばで捨てられていたのを拾ってきてしまったのだ。


「、、あ、、パパ。

やっぱりホノちゃんもいるし、、。

我が家は、泊まり旅行は無理だよ。」


食器を洗い終えたママが、手をふきふき、

次は脱衣所の洗濯機に向かって歩いていく。


そういえば、さっき。

ピピっと、洗濯機の終わりを告げる音がしていた、、。



「、、じゃあさ〜✨

パパが、ホノちゃんとお留守番して、

ママと私で旅行行こうよ〜✨」


ゆきちゃんは、ディズニーランドのパンフレットを手につかんだままで、そう言いながらママを追いかけていった、、、。


TVの前に残された、お父さんと猫のホノちゃん。

一人と一匹は、フト顔を見合わせる。


にぃっ✨♫

笑顔を無理に作って見せるお、父さん。


「!!!、、、」



ホノちゃんは、耳を嫌そうに伏せると、、

黒い尻尾を、クルリと弧を描き、

丸いお尻をプリッと、お父さんに向けたのでした。




※※※


お父さんは、日本酒を飲んで泣いていた。


「家族旅行がしたがったのに、、

うう、、」


世間(会社)では、寂しい中高年と言われ、、

家では、同じ空気を吸うのも嫌という扱い、、、



俺は、、俺は、、

家族で旅行したかっただけなのにぃ!!!💦

ホノちゃんにまで。嫌がられて、、💦


お父さんは、リビングのテーブルに頭を抱えて、

呻いたのでした。


※※※



、、姫さま???✨

ヒゲ姫さま???✨


もう朝でございますよ???✨」


TVのドラマか何かの声なのか。

聞きなれない女性の声が響いている。


反響する音も半端ない。


まるで我が家の、ちいさなリビングとは違う、

別の部屋にいるかのようだ。


、、うるさいなぁ、、


お父さんは、ため息をつくと、リビングのテーブルの上のリモコンを探して片手を探った。



ふかふか、ふかふか、、

「???」


お父さんは、テーブルのかたい表面とは違う感触を不思議に思いながら、寝ぼけた頭をもたげた。


サラサラサラ、、


顔のまわりで、細い何かが背中や肩に流れていく、、、。

薄い茶色のような糸が顔のまわりで、細く長い物が下に流れるように垂れた。


「??????」


忘年会で女装をした事があるが、、

その時に被ったカツラの様な、変な感覚だ。


しかし、暑苦しさもなく、なんとも自然に。

まるで生えているかのような、髪の根元までサラサラと動くのが感じられるのだ。


不思議だ、、。


お父さんは、とにかく周りが眩しくて、

目の前がよく見えない為。

何度も目を擦り、正確に見ようと目を細めて何度も試みたのでした。




「ヒゲ姫さま???✨

朝でございますよ???✨


お早く、お支度を致しましょう???✨」


目が見えるようななった瞬間は、イキナリだった。

声の主の姿が、パッと目の前に映ったのだ。


真っ黒な髪を肩までに切り揃えた、ゆきちゃんと同じくらいの娘さんがいたのだ。


「!!!💦」


お父さんは、慌てる。


目の前の娘さんは、今までに会ったことも、見たことも無い。

ましてや、『そんなお店』に行った覚えもない。


頭の中は真っ白、になっていたわけです。


しかも、よく見ると。

その娘さんの格好が、おかしいのだ。


頭の上に、レースの縁取りをした半円の白い布を付け、、

ハイネックの青いワンピースに、

白いエプロンをしていた。

エプロンにも、頭と同じレースの縁取りがしてある。


いわゆる、、

職場の大塚君が大好きだと豪語して、

スマホの待ち受けにしている、

世間で有名な『メイドさん』とかいう、格好をしていたのだ。


「!!!💦」

お父さんは、頭の中で、一瞬のうちに、

ありとあらゆる想像力を働かせて、今の状況の理由を考えたが、筋が通るものが考えられなかったのでした。


「ヒゲ姫、、さま???✨」


娘さんは、お父さんの顔を心配そうに覗き込む。


お父さんは、若い娘さんの、その行動に耐えきれず、声をあげた。


「きみぃ!!近すぎるよ!!!

??????」


甲高い、、

娘のゆきちゃんよりも可愛らしい声が、

頭の中で鳴り響き、自分の耳にも届く。


お父さんは、目を丸くしながら口を押さえた。


柔らかな唇に、柔らかな顎、、。


いつもの、脂ぎった肌に、伸びかけの無精髭がザラザラと手に触れない。


お父さんは戸惑いながら、

言おうとしていた言葉の続きを口にしてみたのでした。

「、、離れてくれないか、、ね、、???💦」



以前。

ゆきちゃんが見ていた、TVアニメの女の子のような、、可愛らしい声がお父さんの声になっていたのでした。


???💦

お父さんは慌てて、辺りを見回すと。

見たことも無い白基調の、中世の貴族の部屋のように見えた。


天井を見上げると、小さなシャンデリアが、円形の白天井に付いている。


何処だ???ココは???💦

何処なんだ!!!❓💦


お父さんは心の中で、慌てふためき叫んだ。


見ると、テーブルに突っ伏して寝ていたと思っていた場所。

そこは、白いふりふりのリボンレースがたっぷりと付けられたベットだった。


誰のベットなんだ、、???💦


お父さんは、ベットから立ち上がると、後ろに後ずさりをした。


???💦軽い、、???

身体が、信じられないくらい軽いのだ。

疲れも何も無いようにも感じる。


慌てて、お父さんは自分の足元を見た。


いつもは、無骨な茶色の足に指毛がモジャモジャ、、

お世辞にも綺麗とは、言えない足が見えるはずだった。


「!!!💦」


いつの間に着たのか、、

爪先までの白い布の裾が揺れていた、、。


そっと自分の爪先をのぞいて、、

お父さんは、頭がおかしくなった事を理解した。


自分がだ。

その爪先は、娘のゆきちゃんのように、白く美しかったのだ。


思わず見惚れるレベル。

いや、うちのゆきちゃんよりも、手入れされているかも!!!💦


事態が把握できず、クラクラとするお父さんは、

頭を押さえて倒れそうになっていた。


そういえば、、

この前に会社での定期検査で、高血圧気味だと言われたっけ、、💦


お父さんは、ううっと。

頭のおかしくなった自分に呻いた。



※※※




「ヒゲ姫さま???✨

さあ。

こちらで髪を整えますから、、✨」


メイドさんの格好をした人は、

不思議そうな顔をしていたが、


お父さんの肩を軽々と両手で押すと、

大きな鏡の丸椅子に座らせたのでした。

そして、メイドさんの格好をした人は、お父さんの髪をブラシでと言ったのでした。



「今日もお美しいですわ✨

ヒゲ姫さま✨」



お父さんは、鏡の前に映る娘さんを見て固まっていた。


椅子に座る娘さんは、お尻までの薄い茶色の長い髪。

白い寝巻きワンピース姿。


目を大きく見開き、ポカンとした顔をした娘さんが

鏡の中にいたのだ。



お父さんが首を右に揺らすと、

鏡の中の娘さんも、右に、、


お父さんが首を左に揺らすと、

鏡の中の娘さんも左に、、


思わず、両手を両方に押し当てると、

お父さんは、鏡の中の娘さんに叫ぶ。


「嘘ダァー!!!!💦」


頭から出たような、

甲高い女の子の叫び声が、部屋中に響き渡るのでした。


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