第197話 パーティー(2)

一方、絵梨沙は


真尋からいきなりBGMを任されて慌てて練習室で練習をしていた。



真尋ったら


何を考えているのかしら


せっかくの


八神さんたちの結婚式で。


二人もすごく真尋のピアノを楽しみにしていたはずなのに。



ピアノを弾きながら、彼に対する不満でいっぱいだった。



「ママ、」


竜生が顔を出した。


「竜生、」


「おれもあとでピアノ弾いてっていわれたから練習してた。 へやのピアノで、」


ニッコリ笑う。


「そう。 ちゃんと弾けそう?」


絵梨沙は微笑む。


「うん。 バッチリ! しんごのけっこんしきだもんね! おれはね~、ショパンだよ。 ママもひくの?」


「うん。 急に言われて、今ちょっと練習してたの、」


「そっか。 がんばってね!」


と笑顔で言われて、


「うん、」


竜生の頭を撫でた。




「え~? またピンク~? しかも、全体的にっ!」


八神はまたも着せられたタキシードにぶーたれた。


「ピンクったってうっすーいかわいいピンクやん。 美咲ちゃんのドレスに合わせて探したんやから。 文句言うな、」


南は彼の衣装を調えながら言う。


「おれはどんだけ美咲に合わせればいいんだっつーの、」


「あのねえ。 結婚式なんてさ、女の子のイベントなんやから。 男は正直どーでもええねん。 ま、せいぜい引き立て役になってな。 でも! 八神もめっちゃ男前になったで~! 髪型もいいし。 ジャニ系になってる、なってる!」


南は喜んだ。


「はああ~。 もう、」


八神は始まる前から疲れてしまった。



そして、


「慎吾、仕度できた?」


美咲が入ってきた。


お?


思わずその姿を凝視してしまうほど


セクシーなドレスだった。


「ねー、かわいーでしょ? ミニスカなんだけど~、後ろは長いの。この前のは清楚な感じだったけど、今日はエロカワでいってみよっかって南さんと、」


美咲はくるっと回って見せた。


「・・なんか胸元開きすぎじゃない? オッパイの谷間とか・・」


八神はちょっと覗き込むようにして言った。


「え~? そう? でも、このくらいのがかわいいし~。」


「屈んだら見えるよ、」


嫌そうに言ったので、南はぷっと吹き出して、


「他の男に見せたくないんやって。」


と言った。


「や! そういう意味じゃ。ほらっ、もうすぐ30になろうってのにって!」


八神は手をぶんぶん振って言い訳をした。


「30、30ってうるさいね。 いいじゃん、30だってカワイイカッコしても! あ、そうだ。」


美咲は手にしていたおそろいのブートニアを八神の胸のポケットに挿した。


「おそろいなんだよ。 かわいいでしょ?」


と上目遣いでニッコリ微笑まれると


正直


すっげー


かわいい。


彼女に見とれてしまった。




南が席を外すと、美咲は


「ねえ、慎吾・・」


ちょっと神妙な顔で言った。


「え? なに?」


仕度ができて時間があったので、八神は持ってきたマンガを読んでいた。



すぐマンガなんだから・・


美咲はちょっと膨れた。


「あ、すっげー、笑える、これ・・」


八神は超能天気だった。


「なに?」


もう一度聞かれたが、


「べつに。 なんでもない、」


美咲はプイっと横を向く。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る