第174話 2週間前(2)

「もう、びっくりした。 南さんから電話もらって。 病院行ってるなんて知らなかったし、」


家に帰ると美咲にグチられた。


「だって・・なんか美咲に心配かけたくなくて、」


うなだれて言う。


「もう! あたし、慎吾の奥さんでしょ? 慎吾が病院に行くのに、南さんについていってもらうなんて、」


「うん、」


「もし、慎吾があと3ヶ月の命って言われても、あたしは強く生きるから!」


と、肩に手をおかれて、


「その・・励ましも傷つく・・」


「今度、病院いつ行くの?」


「明後日。 もう一度、検査して。 そのあと、そのナントカって機械で爆発させるとか、」


「でもさあ、石だけをバクハツさせるなんてできるの?」


「知らないよ。そういう治療法があるって、」


「他の内臓もバクハツしちゃわないの?」


美咲の言葉に、八神は両耳を手で押さえて、


「わああああ!!! いやなこと言うなあ!!」


本気でビビっていた。



怖がりの彼をわかっていて、美咲はもっといじめたくなり、


「すごい音とか、したりして。」


「バカっ!! やめろっ!!」


脂汗がダラダラと流れてきた。



美咲は笑って、


「もう、ホントに怖がりなんだから。 今度の検査にはあたしも会社を抜けてついていってあげるからね、」


美咲は八神の頭をいいこいいこした。


「はあああああ、」


命に別状ないとわかったものの。


なんか体の中にあると聞いただけで、いつその石が移動して痛みがやってくるのかと思うと八神はドキドキした。


人から聞いたところによると、もうその痛みと言ったら、七転八倒するほどだと・・



「八神さん! おはようございますっ!!」


夏希の大きな声にも


「・・でかい声をだすなっ!! 驚いた拍子に石が動いたらどうすんだっ!!」


本気で怒った。


「アホか・・」


それを見た南は呆れた。




そして、次の診療日。


美咲も張り切って(?)やって来た。



「八神さん、どうぞ。」


と呼ばれて診察室に入る。


美咲も一緒に入っていく。


「あ、先生。 どうも・・『主人』がお世話になりまして!」


美咲はオーバーににこやかに挨拶をした。



主人・・??



八神はゾッとした。


「ああ、奥さんですか。 どうぞお座り下さい、」


『奥さん』なんて言われて美咲のテンションは上がり、


「もー。 すみません。 この人、怖がりなもんですから。 石くらいで大騒ぎしちゃって!」


それと反比例するように八神のテンションは下がりっぱなしだった。


「まあ、検査したところ、胆石には間違いないですね。 それで、えっと・・ESWLという機械で石を粉砕します。 そうですねえ、1~2回くらいやれば大丈夫だと思うんですが。 間をおきながら・・」


と言われて、


「え~、あの。 あたしたち2週間後に結婚式なんですけど~、」


美咲が言うと、


「そうですか。 それはおめでとうございます。 まあ、痛みもないし入院もする必要ないですから。 大丈夫でしょう。 予約で調整すれば。 とりあえず、1回目は明後日、と言うことで。」


医師はにこやかに言った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る