第152話 安心(1)

美咲は一緒に寝れないと言われて、猛烈に侮辱されたような気になり、


「バカっ!! もう絶対に一緒に寝てやんないんだから!! 寝室に入ってこないでっ!!」


とその部屋のドアをバタンと閉めて出て行ってしまった。


「なんだよ、も~~。」


こうして、早速ケンカをした二人は家庭内別居に入ってしまった。




翌朝も美咲は口も利いてくれなかった。


「弁当はいいのかよ、」


と、彼女の分の弁当を渡そうとしたが、


「いらない!」


と怒って出て行ってしまった。

「あっそ! んじゃあ、もう作らないよ!」


八神もいい加減、腹が立ってきた。




お昼時。


「あ、加瀬。 よかったらコレ食って。」


と美咲の分の弁当箱を夏希に手渡した。


「え? いいんですか?」


「おまえには量が少ないかもしれないけど。」


「これって彼女の弁当箱じゃないですかあ?」


例のピンクのキテイちゃんの柄をマジマジと見た。


「ああ、いいの。 あのわがまま女! もったいないから加瀬にやろうかなあって思って持ってきたの。遠慮すんな。 給料前だし、」


と八神は席を立ってしまった。



ったく!


寝れないんだからしょうがねえじゃんか。


自分を改めようとしないくせに、人に文句ばっか言って!


あ~あ


おれこんなんで美咲と暮らして行けるのかな・・




八神はため息をついた。




1月だと言うのに。


生暖かい風が吹いていた。



なんだろ。


不気味。


八神は帰り道空を見上げながらそんな風に思った。



美咲は相変わらず、不機嫌そうにしていた。



もういいや。


ほっとけ。



八神も面倒なので放っておいた。



そして


いざ寝ようとしたとき。


美咲は一人でベッドに入った時、窓の外がピカっと光ったのに気づいた。


「えっ・・・」


気がつくと大粒の雨が降り出している。


雷鳴も聞こえてくる。



うっそ、カミナリ??


この真冬に!?



思わず布団を被ってしまった。


だんだんとカミナリが近づいてくる。



も~~、やだ~~!!



美咲はとにかく怖がりだった。


そっと隣の八神が寝ている部屋に入っていく。


もう電気が消えていて、八神はこんなにカミナリがすごいのにグウグウ寝ていた。



も、なによ・・。


あたしの寝相が悪いくらいで寝れないとか言っておいて!


こんな雷の中で爆睡じゃん!



気持ち良さそうに寝ている八神の寝顔に腹立たしくなった。


「慎吾・・」


と、揺り起こすが全然起きない。


「慎吾、」


少し、口調を荒げて言った。


「ん・・?」


ちょっと目を開けた。


「なんだよ、」


メイワクそうに起きると、


「・・も、すっごいカミナリ・・。」


「カミナリ?」



その時、閃光がまたたき、近くに落ちたのではないかと言うくらいのカミナリの音がした。


「きゃーっ!!!!」


美咲は悲鳴を上げて八神に抱きついた。


「すっげえ・・落ちたのかな・・」


八神は暢気に言った。


「も~~、寝れないよ~。 ここに寝ていい?」


美咲は半ベソをかいていた。


「はあ??」


それで目が覚めた。


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