悩める勇者と偽り従者

無糖黒

1章 悩める勇者と偽り従者

1話 勇者と従者

0.初めて

(ああ――どうして、こんなことになったんだろう…)



 セノン・ラグウェルは、纏まらない思考のまま考える。


 優しく抱かれる、肌を晒した自らの体。

 肌に触れる、女性の柔らかな体の感触。

 顔を押し付けた絹のような肌はうっすら汗ばみ、息を吸うたびに甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 温かく心地よく、緊張で強張っていた体と心が溶けていく。



(もう、いいのかな…)



 セノンはぼんやりと考え、優しく触れてくる滑らかな手の感触と、自らの情動に身をゆだねた。

 体を抱く女性はセノンが体を預けてきたことに気づいたらしく、ふふ、と幸せそうに破願するのが気配で伝わる。



(ああ… 僕はずっと、この人にこうして――)



 密着していた体が僅かに離れたかと思えば、こちらの頬に手が添えられる。

 緩く開いていた口が温かく柔らかなモノで優しく押し開かれた。

 口内に、何かが入り込んでくる。


 初めて味わう柔らかな感触に、セノンの意識は蕩けていった。

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