3話〜異変

雪とショピングモールに出かけた帰り道、大地たちは公園で少し休憩をとっていた。


大地は自販機でメロンソーダと雪の好きなホワイトソーダを買い、雪が座っているベンチの隣に腰をかけた。


「ほら、雪の好きなホワイトソーダ」


大地は雪にホワイトソーダを渡した。


「‥‥‥ありかど」


雪は嬉しそうに受け取る。


公園で子供達が楽しそうに遊んでいるのを眺めながら、二人で飲み物を飲んでいると、ふと雪が


「‥‥‥大地、何で部活辞めたの?」


雪が尋ねてきた。


「あー、あれだよ。あれ。先輩とのいざこざだよ」


「‥‥‥何があったの?ずっと空手続けてきたのに、急に辞めるなんておかしい。全国大会も出場決まってたんだよね?」


雪は大地を心配そうに見ながら聞いてきた。


「あぁ、決まっていた。決まった頃から、周りの部員の様子がおかしかったんだよな。妙に俺を避けるし、俺と組手も組んでくれたりしてくれなかった。先輩は俺を集団で暴力振ろうとするしたから、返り討ちにしたら、顧問に呼び出されて先輩に暴力振るうとは何事だとか言って怒鳴られるし、なんか別にどうでも良くなって辞めちまった」


「そんなのおかしい!大地はいつも誰よりも練習して、大地のお母さんの地獄の特訓とかして頑張ってたから、大地は強くなった!私ちょっと行ってくる!」


雪は立ち上がってどこかに向かおうとする。


「待て待て、雪はなんでいっつも俺の時だとそんなに怒りやすいんだ?俺は別に気にしてないし、部活に行かなくたって、空手はできるんだぜ?だから気にするな?俺は今の生活に満足してるんだから」


大地は雪の腕を掴み雪を宥める。


「‥‥‥大地はいつも他人に優しい。だからいつも損してる。」


雪は渋々ベンチに座る。


「ほんとに今の生活に満足しているんだって。雪ともこうして出掛けることも増えたことなんだしな!」


大地は楽しそうに答える。


「‥‥‥大地、それ反則」


雪の雪のような肌が赤く染まる。


それから無言の時間が過ぎていると、ふと周りの雰囲気が変わった。


グラウンドの真ん中あたりから魔法陣のようなものが出現したのだ。


大地は何かのイベントか?と。不思議そうにその魔法陣のようなものを見つめていた。


雪は大地の服の袖を掴み、不安そうに見つめていた。


そこから突如、黒い穴のようなものが出現した。


穴の中には中世ヨーロッパの鎧のような古い鎧を着ている人々が立っていた。


その人々は穴の外に出ようとするも、何か結界のようなもので入れずにいた。


するとその人達の後ろから人ならざる者たちの姿が映し出された。


それは牛が二本足で立ち、棍棒らしきものを持っていた。


その化け物のようなもの達は結界を壊そうとわ必死に攻撃を加えた。


そんな様子を見ていた公園にいた人はパニックになる。


それもそうだ、化け物が外に出てこようとしてるのだ。


パニックにならない方がおかしい。


走って公園から逃げる人、我が子を抱えて逃げようとする人、パニックになりその場で泣いている子供ら大地は雪を置いてそんな子供に近づいていこうとする。


「‥‥‥大地。どうするの?」


雪は大地に心配そうに尋ねる。


「大丈夫だ!ただの人助けだ!」


大地はそう言うと泣いている子供に走って近寄っていった。


「大丈夫か?お母さんはいないのか?」


大地は尋ねる。


「ママ忙しくて、1人で来たから、いないの」


子供は泣きながら答える。


「よし、じゃあ兄ちゃんが外に連れてってやる!」


大地はそう言うと子供を抱えて雪の元へ向かった。


「よし、走るぞ!」


子供を抱えた大地と雪は走り出した。


走っている中、公園の外から一台のパトカーがサイレンを鳴らしながらが近づいて来て、パトカーは公園のそばで止まり、二人の警察官が出てきた。


大地と雪はその警察官の方に向かった。


「どうした?一体公園で何があった!?」


警察官の一人は大地達に尋ねる。


「なんかよく分からないけど、急に穴みたいなのが出てきて、そこから怪物みたいなのが出てこようとしていて、パニックになってる!」


「何だ、それは?新手のテロみたいなものか?こんな公園で?」


もう一人の警察官が大地達に問う。


「知らない!けどテロではないと思う」


「とりあえず、君達は急いでこの場から離れなさい!我々は応援を要請する!」


一人の警察官は連絡を取ろうと、無線機を手に取る。


「‥‥‥すみません。この子1人で公園に来たらしくて、私たちが外に連れ出して来たんですけど、この子の保護をお願いします」


雪はそう言って大地の抱えた子供に顔を向ける。


「分かった!我々が責任を持って保護する!なので君たちは急いで退避しなさい!」


警察官は子供を抱えてパトカーに乗せる。


大地と雪はその様子を見届けると家の方に向かって走りだす。


十数分走ったぐらいで大地達は走るのをやめ、ゆっくり歩き始めた。


「あれ、いったい何だったんだろうな?」


「‥‥‥分からない。でもあれは人が作った?CGとかそう言うのじゃないと思う。本物のように見えた」


「確かにそうだな。まぁ、でもあとは警察の方が何とかしてくれるだろ!」


「‥‥‥ん」


雪は頷く。


「今日はありがとうな。俺、部活辞めてから何もすることがなかったから、家でボーッとすることしかできなかったからな。雪のおかげで気分転換できたよ」


「‥‥‥私の方こそありがとう。大地はいつも部活してたから、一緒にデートできて楽しかった」


雪は微笑む。


「待て!あれデートだったのか!?俺にはただの荷物持ちさせるために誘ってきたのじゃなかったのか!?デートらしいことを一切していないぞ!」


大地は反論する。


「‥‥‥大地。‥‥‥照れ屋さん」


「照れてねぇよ!はぁ、もういいや。雪、ほんとに今日はありがとうな」


大地は雪の頭を撫でる。


「‥‥‥大地、それは卑怯」


雪は顔が真っ赤になり俯く。


「ん?どうした?もう家だぞ!ほら、雪、荷物を持て!これ結構重いからな。気をつけろよ?」


大地は荷物を雪に手渡す。


「‥‥‥ありがと。明日は私をどこかに連れてってね」


雪は荷物を受け取りながら言う。


「明日も行くのか!?はぁ、分かったよ。何か考えとくよ。じゃあまた明日な」


「‥‥‥ん。、また明日」


雪は微笑む。


しかし、2人が待ち望んでいた明日は来ることはなかった。

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