ミルクと憧れとコーヒーと
カゲトモ
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「あれ、どうしたのこんな時間に」
駅前のコーヒーショップでいつもなら出会わない顔に出会った。俺は出勤前に新作を買いに来たけれど、こんな時間にこんな場所でこの子に出会うとは思わなかった。だって高校生がこんな時間に、しかも春喜君がこの店でコーヒーを買うようには思わなかったから。いや、俺が思ってなかっただけでヘビーユーザーって可能性もあるか。今どきの高校生は高いコーヒーだって普通に飲むもんな。昔はそんなのなかったよなー。あれ、田舎なだけ?
「今日は早く終わる時間割だったんです。なんか、明日の準備? とかで」
「適当だね。そうなんだ、ラッキーじゃん」
学校が早く終わることをラッキーって思っている時点で俺はダメな大人なのかもしれない。
「そうなんですよ、ラッキーでしょ」
良かった、ここにも賛同してくれる現役の高校生がいて。
「それで春喜君も新作飲みに来たの?」
さりげなく窓辺に座っていた春喜君の隣に腰を下ろす。彼の目の前にも俺と同じドリンクが置かれてあった。日本茶とホワイトチョコのマリアージュを味わえるなんて、誰がこんな最高な組み合わせを考え付くんだろう。カクテルでもこういうの出来ないだろうか。
「いや、まぁ、美味しいって、聞いていたんで」
俺の熱量とは裏腹に春喜君は冷めた感じで答える。コールドドリンクだから? なんてね。
「どう、美味しかった?」
「ん・・・まぁ想像よりは」
と言ってから気づいたように口元を押さえる。大丈夫誰も聞いてないよ。
「あんまりお茶とか飲まないんで、それなのに俺でも飲めるんだからとても美味しいんだと思います」
「あれ、あんまりお茶とか飲まないんだ?」
呉服屋の息子なのに?
「それは偏見ですよ。お客さんに出したりはするけど、俺はあんまり好きじゃないってだけで」
ま、牛乳屋の息子がチーズ食べられないとか、そういうこともあるよね。
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