『暗黒女子』 マリア様が煮てる

 誰がお嬢様を自殺に追い込んだ?



「マリみて」の舞台のようなお嬢様学校で、トップクラスの人気を誇った女子生徒が、花壇に身を投げた。

 手には、スズランの花が。


 彼女が通っていた文学サークルで、部員たちが自作小説の朗読会を始める。


 しかしそれは、「誰が部長を死に追いやったか」を公開する、暴露会だった。



 原作は、秋吉理香子氏のミステリー小説。

 いわゆる「イヤミス」、「嫌な思いのするミステリ」という部類に入る作品。


 少女たちはそれぞれ闇を抱えていて、学校に黙ってバイトをしていたり、被害者の父親と妙な関係を持っていたりする。


 それを、彼女たちに敵対する部員たちが暴いていく。


 表向きは、仲がよさそうなグループに見える。

 しかし、彼女たちの本当の敵は部員たちであった。

「お互いを、お互いに牽制しあっていた」という設定だ。

 実にいびつな人間関係である。



 暴露本公開の場面が、庶民的な「闇鍋パーティ」という遊びなのも、シュールで面白い。


 少女たちの抱えている暗黒面を、誰が何を入れたのかわからない闇鍋で表現したのは、皮肉が効いている。



 内容はシンプルで、オチもすぐ読める。

「ああ、まあこうなるだろうな」とわかる。


 だが、それぞれの情念、思惑、伏線が見事で、真相より行間を読む方が楽しいかも。


 イヤミスの楽しみ方が、よく分かる作品だった。

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