『悪霊島』 ヤンデレの岩下志麻に死ぬほど愛されて安らかに眠れない伊丹十三

 横溝正史原作「金田一シリーズ」最後の作品だという。


「鵺の鳴く夜は恐ろしい」


 というキャッチコピーは有名。


 


 ジョンレノンが死んだ日、ラジオ局の男性がとある事件を思い出す。

 

 フェリーが、ドザエモンを拾う。

「あの島には悪霊が」

 と言い残し、男は息を引き取る。


 ヒッピーをしている主人公は、電車内で着物姿の男、金田一と遭遇。

 切符をなくしたという。

 ヒッピーは彼と共に、電車を乗り逃げする。


 水死体を調査する警察が、金田一(演じるは鹿賀丈史さん)と対面。

 彼は別の事件を調査中に、水死体の調査も頼まれたのだとか。

 

 殺人事件の方は、イタコの老婆が死んでいた。

「扼殺」、つまり首をしめられていたという。

 モグリで産婆などして、生計を立てていたという。

 刑部(おさかべ)島にある神社の神籤が、現場に。

 金田一も、刑部島に住む男に用事があった。

 すると刑事「さっき上がった死体の背広に、男の名字があった」


 


 死んだ男は、あるメッセージを残していた。

「鵺の鳴く夜には気をつけろ」


 

 刑部家は、源氏の追っ手を逃れて、島に流れ着いた一族の末裔だという。

 刑部家に招かれた金田一は、ヒッピーが刑部家と親しくしている現場に出くわす。

 神主の妻と、娘の真帆と片帆の三人をカメラに収める。

 

 

 ヒッピー曰く、鵺の鳴き声は「トラツグミの声ではないか」という。


 

 越智竜平という富豪が、高速艇で島に辿り着く。演じるは伊丹十三監督!

(なお本作の監督は篠田正浩氏)

 

 刑部神社神主である守衛と話した後、車に乗り込む。

 そのとき、彼に詰め寄る男が。いつぞやのヒッピーだった。



 祭りの最中に神社で火事が発生。幸い、神社は守られた。

 だが、奥で弓に貫かれた守衛が発見された。

 第一発見者は越智竜平。

 村の者達は、竜平が島に復讐をしに来たのでは、と勘ぐる。


 竜平に動機がある。

 守衛の妻の姉と駆け落ちも考えた相手だから。

 心に障害を持った彼女は、屋敷の奥に隔離されている。


 続いて、女の腕を咥えたイヌが目撃される。

 守衛の子どもである双子のウチ、片帆の方である。

 野良犬に食い荒らされていたが、死因はこちらも扼殺であった。

 しかも、神主の守衛より前に殺されていた。


 目撃者は、またもヒッピーである。

 彼は「蓑と笠を被った男を目撃した」という。

 その人物は、神社が火災に遭ったとき、金田一が目撃していた。

 水を被って消火活動に参加する前から、とっくに濡れていたのである。

 その光景が印象に残っていた。



 金田一は、越智家の元へ。

「鵺の鳴き声が、神主の妻と越智竜平が逢い引きする際の合図」

 だったと知る。

 神主の妻は妊娠していたらしい。広島でこっそりとモグリの産婆の手で。

 その産婆こそ、「扼殺されたイタコ」だったのではないか!?


 だが、回答は「違う」とのこと。


 越知亭で竜平とか会話中、

「車の向こうでヒッピーの若者からなんと言われたのか」

 を尋ねる。



 竜平は、「お父さん」と言われたのだという。 


 




 本作は、岩下志麻さんがヤンデレ女を演じている。


 普段の凜とした役柄とは一転、男狂いに変貌する。


 そんな役を同時にこなす点が凄まじい。


  

 本作にはいわゆる双子要素が用意されている。

「あーはいはい双子ね」

 と思ってたら、騙される。


 だが、横溝作品を見ていたら、重要な女優が出てきた途端に、

「犯人だ!」

 と分かってしまうだろう。


 横溝映像作品において、

「女優で犯人を当ててしまう」

 のは、もったいない。

 

 ただ、演者の狂気っぷりが見事なので、そこを見ていただきたい。


●余談


 本作は公開当時やTV上映されたとき、ビートルズの曲が脚色なしで流れたとか。

 だが、DVD化される際に著作権の問題で、違う歌手の歌に変えられている。

 そのせいで、雰囲気が若干残念に。

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