『キャスト・アウェイ』 ひとりDASH島

 フェデックスのシステムエンジニア、チャック・ノーランド(トム・ハンクス:井上和彦)は冒頭、時間厳守の効率主義者として描かれる。


 勤め先であるロシア・ニコライでのミーティングで、チャックは自分宛の荷物を開封する。

 中にはデジタル式のタイマーが入っていた。

「この荷物がメンフィスからここに届くまで87時間も掛かった!」

 彼は、頼んだ荷物が現地に届くまでの時間を計測していたのである。


 何よりも時間を守る男だったチャック。

 彼を載せた飛行機が、悪天候のせいで海へ墜落。チャックは無人島に流れ着いた。


 救命ボートを使って脱出を試みるが、失敗して島に逆戻り。


 ヤシの実を割るのも一苦労。

船を見つけても、こちらには気づかない。

 

 しかたなく、チャックは積み荷を解いて私物化し、島での生活を始めた。

 しかし、天使の羽根がプリントされた箱だけは開けなかった。

 救命ボートはテントに変えた。

 フィギュア用シューズのヒモを使って、足のケガをプチプチで塞ぐ。

 

 

 相棒は、バレーボールのウィルソンだけ。おそらくメーカー名である。


 彼の前で火をおこし、歓喜の声を上げた。

  


 ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の作品と言えば、『フォレスト・ガンプ/一期一会』以来、二度目となる。




 それから、4年の月日が流れた。

 そこには、ヤリで魚を仕留めるチャックの姿が。 


「かなりまな板だよこれ!」

 

 彼は流れ着いた板を発見し、再び脱出を試みる。

 木の皮を使って自力でロープを作り上げるまでの技術を身につけていた。

 


 順調にイカダを作っていくが、ロープが足りない問題が発生した。

 彼には、残りのロープのありかに心当たりがあった。

 

 今から一年前、彼は自殺をするためのテストをしたのである。

 その際に使ったロープを、恥じらいながらも拾う。


「あのころはもう忘れようぜ」と、ウィルソンに語りかける。

 感情のままにウィルソンを洞窟の穴から投げ捨てる。

 しかし、心細くなったチャックは、再びウィルソンを拾った。


 この奇妙な友情関係のおかげで、チャックは望みを失わずに済んだのかも知れない。

彼はウィルソンの顔が消えていく度に、手を切って血で塗り直している。


 信念を保つにはパートナーの存在も欠かせない。



 ジョン・ムーア監督の映画『エネミー・ライン』において、空母から落下したラグビーボールに「ウィルソーン!」と叫ぶシーンがあるとか。

 本映画に対するリスペクトらしい。

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