『屋根裏の散歩者』 まさかのクソM展開 

 ボロアパートに住む主人公の隣室には、いけ好かない歯科医が住んでいる。

 

 そこに、木嶋のり子が演じる女子大生が越してきた。

 彼女は歯科医の愛人だった。

 夜な夜な、彼女は歯科医から暴力を振るわれている。


 主人公は、アパートの屋根を伝ってDVの様子を伺っていた。


 歯科医には婚約者がいる。だが、

「暴力を振るわないと勃たない」という性癖が邪魔をして、婚約者との夜の生活に不満を抱いていた。

 そのはけ口が、女子大生だった。


 婚約者は、明智小五郎の妻によって、身辺調査までしていた。


 なんと彼女は、婚約者に「暴力を振るわれてるから助けてくれ」と言い出す。


 屋根裏から覗く主人公を、懇願するように見つめてくる女子大生。

 

 意を決した主人公は、歯科医の部屋からモルヒネを奪い、自殺に見せかけて殺害した。


 だが、明智小五郎は住人から

「被害者の部屋から、けたたましい目覚まし音が鳴り響いていた」

 と聞かされる。

 自殺者が目覚ましなんて?


 これは、明らかに殺しだった。



 やがて事件は解決するが、婚約者は愛人を許さない。カフェへと呼んで散々罵る。


 だが、愛人は



「これで先生は、永遠に私のもの!」



 と笑い出したのだ。


 すべては、彼女が仕組んだシナリオだったのである。


 原作とは、あまりにもかけ離れたシナリオだ。

 しかし、女子大生から放たれる女の情念は、同作者の「陰獣」を彷彿とさせる。


 この展開を見て、オレは


「これがクソMか!」


 と思った。


 杉田智和さんが命名した、いわゆる


「自身の快楽のために、Sでもない人すら巻き込んでM行為に浸る」


 といった激烈変態行為である。


 原作とはあまりにも離れた異常性を見せる。

 だが、乱歩っぽさはより色濃く出ているのではないか。

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