『ヒトラー 〜最期の12日間〜』 本当は怖い、総統閣下シリーズ

 ヒトラーの秘書となった女性が見た、総統の正体。

 冒頭で、年老いた女性が語る場面から、映画は始まる。


「総統閣下シリーズ」の元ネタで有名。

「帰ってきたヒトラー」でも、同じシーンがパロディ化されている。


 そこで「泣いている女性を慰めている女性秘書」が、冒頭の語り手で、主人公だ。

 

 実はあのシーン、

「部下が自分の命令を無視したのでキレていた」

 場面である。

 元動画も上がっているので、知っている人は多いと思う。


 だが、本作はかなりガチで、総統がいかに自己中かが描かれている。


 印象的だったのは、ヒトラー青少年団なる少年兵たち。


 彼らはヒトラーに忠誠を誓いすぎて、実の親にすら反抗する。

 少年兵にとって尊敬すべきはヒトラーただ一人なのだ。

 目の前で味方が死んでいるのに、パンツァーファウストを構える姿は、目が血走っている。

 死者を見る少年兵の瞳からは、弱いから死んだのだと言った感情さえ垣間見られた。


 国のために戦車を葬った少年の頬をつねりながら褒めたたえ、同じ口で「市民に犠牲はつきものだ」と平気で言う。


 終盤、血気盛んな少年兵は、友達の死体を見て、我に返る。

 幼い戦士は何の力もない少年へと戻り、死に物狂いで帰ってきた。

 熱を出した少年に、「まだ生きている」と言って笑いかける父親。

 これこそ、本当の勝利だ。


 対照的に、ヒトラーの家では、総統の死後、部下は少年兵より幼い我が子を大量毒殺し、自身も一家心中を図っていた。


 この対比が、いかに独裁政治に未来がないかを物語っている。

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