『十三人の刺客 (1963)』 水戸黄門の本気

 皆さんは、『水戸黄門』と聞いて。誰を連想するだろうか?

 佐野浅夫、若い方なら里見浩太朗であろう。初代の東野英治郎、ちょっとだけ主演した石坂浩二などは、覚えている人は少ないのでは?

 オレら七〇年代後半の世代なら、西村晃ではないだろうか。


 本作は、西村晃が剣豪となって人を斬りまくる話だ。

 冒頭の、剣の稽古をするシーンだけで、凄腕だと思わせてくれる。

「好々爺としてのご隠居」しか知らなければ、衝撃的な場面だろう。


 片岡千恵蔵が扮する旗本が、「素行の悪い明石藩のバカ殿を暗殺しろ」、と老中の丹波哲郎から命令される。

 腕の立つ刺客十三人を集め、バカ殿抹殺指令を決行する。


 里見浩太郎や山城新伍なども出演している。

 みんな若い! 誰か分からへん!


 本作はリアリズムに徹底しており、殺陣が格好よくない。

 アクションと言うより、乱闘そのものだ。

 歌舞伎のような洗練された剣戟はなし。

 闇雲に剣を振り回し、叩き付ける。

 敵に囲まれそうになったら、民家に立てかけてある丸太を倒して道を塞ぐ。

 矢が飛んできたら俵に身を隠す。

 そんなシーンが延々と続くのだ。


 これは、監督の狙いであり、

「平和な時代に人を斬ったことのない侍が刀を持った時の殺陣」

 を表現しようと試みた結果だという。


 本作の約十年前に撮影された、黒澤明監督の『七人の侍』を少なからず意識していたようだ。

 だが、興業は振るわなかったという。

 

 ちなみに、2010年版は、稲垣吾郎氏がバカ殿役で出るという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る