第14話 告白②

Side ユキ


振り返るとトオルがいた。

信じられないと言うように大きく目を見開いて。

「ユキ…」

トオルの声が遠くに聴こえる。

知られてしまった!

嫌われてしまった!

もう、隣にはいられない…。

「イヤだ…」

縋って違うと間違いだといえば良かったのだろうか。

冗談だよ。と笑えば良かった?

もう終わりだ、もうだめだとしか考えられず、差しだされたトオルの手を振り払って走り出した。

逃げたところで体力的にも勝っているトオルにあっさりと捕まってしまった。


「待てってば!」

腕を掴まれる。

「イヤだ!」

掴まれた腕を振り払おうとすると逆に強く掴まれた。

「とにかく、落ち着け」

トオルが言うけど、僕はイヤイヤと首を降ることしか出来ない。

すると、カミナリが鳴った時のようにすっぽりとトオルに抱きしめられてしまった。

「えっ?なんで?」

「ユキ、オレの事が好き?」

反射的に胸を押した。

「…男のくせに気持ち悪いとか思ってるんでしょ」

自分で言って悲しくなった。

まるで、自分の気持ちを否定しているみたいで…。

ポロポロと涙が零れる。

トオルは大きなため息をついた。

「なんで、そうなるんだ?」

怒ったように言うと、トオルの顔が降りてきた。

そして、チュッと僕の唇にトオルの唇がふれた。

えぇ〜?

なに、なに、なに?

からかってる?

オタオタする僕の目をまっすぐ見つめて

「オレも好きだ。ユキが好きだ」



Side トオル


ユキがオレの事を好き?

本当ならめちゃくちゃ嬉しい。

抱きしめたい。

「ユキ…」

名前を呼んで手をのばした。

イヤイヤするように首を振るとオレの手を振り払ってユキが走り出した。

「イヤだ…」

なっ、なんで?

オレの事が好きなんじゃないのか?

なんで逃げるんだ?

慌てて追いかけようとしたが、有希子を一人にするのは躊躇われた。

有希子を振り返ると、行けと目で言ってきた。

頷いて走り出した。


なかなかユキに追いつかない。

いっそ、カミナリでも鳴ってくれないかと思う。

そうしたらこの腕にすっぽりと抱きしめられるのに。

「待てってば!」

漸く追いついて腕を摑んだ。

「イヤだ!」

摑んだ腕を振り払おうとする。

振り払われないように、強く摑んだ。

「とにかく、落ち着け」

ユキはイヤイヤするように首を振るばかりで

埒が明かない。

まるでカミナリが鳴った時みたいだ。

それならとぎゅっと抱きしめた。

「えっ?なんで?」

「ユキ、オレの事が好き?」

ユキからちゃんと言って欲しかった。

ユキの口から聞きたかった。

それなのに。

「…男のくせに気持ち悪いとか思ってるんでしょ」

オレの胸を押し返してポロポロと泣き出した。

泣かせたいわけじゃないのに。

ああ、もう!

大きなため息がでてしまった。

「なんでそうなるんだ?」

怒ったように言うとユキの唇にチュッと触れるだけのキスをした。

オロオロするユキの目をまっすぐ見つめて

言った。

「オレも好きだ。ユキが好きだ」


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