第40話 古株と新しい力
最終予選の最後の相手UAE戦を前に簡単な合宿を行った
この試合のメンバーは前回と同様だ予選の突破を決めている今、あまり無理に選手を変えると混乱するからだ
俺は前回の対戦で外れた4人を呼び出しノートを渡した
「それが鳴海ノートだ」
「あれ、これ白紙じゃないですか」
「そうだ、俺が言った事をメモするための物だ」
納得のいかない様な顔をしている4人に脳科学について簡単に説明した
まず、一般的に物を覚える為にはインプットとアウトプットが必要とされる。
これは聞いた事を書くことによって脳が一文字一文字を書いた記憶としても覚えるので2重に覚えているのだ。
その為忘れにくい事になるし、忘れて読んだ時にもう一度、同じ文章を書くと良いと言われているのは俺の持論でもある
そんな事を4人説明した後に俺は聞いてみた
「4人は外れて悔しくなかったか? 」
「悔しいに決まってるじゃないか」
そう4人ともプロであり代表に呼ばれるほどの競争を勝ち抜いてきたエリートである
獣の牙を持っている折らずに使わないといけない
「じゃ4人は泣き寝入りか?」
「違いますよスタメンを奪ったらね、見せつけますよ」
「いいか良く聞け、そして書け、悔しいと思う事は人間として当然だし、それが大きく、なければいけない」
俺は更に声を上げていく
「悔しかったら、それをモチベーションにしてトレーニングしろ」
「いやでもオーバーワークになりますし……」
"そうだよなぁ"と言った表情で4人は互いを見ていた
「では聞くが、筋肉が成長するのに必要なのは?」
「筋肉痛ですよ」
「そうだ筋肉痛が回復過程で筋肉は増える。では短距離走は?」
「同じじゃ無いんですか」
「それは10秒の物が9秒を目指して初めて起こる、10秒走れるものが10秒を走っても、あまり瞬発筋には意味はない」
「はぁ」
「悔しさはその限界を超える時に使うんだ分かったな」
「はい」
「今度の試合で実力を測る上でも必要だから、お前らを使う」
「では、トレーニング方法は、お前らからスタメンを奪った奴らに聞いて来い」
「あとで夕方までにビデオを準備しておくから、夕方からフォームチェックするぞ」
監督と言う仕事はモチベーターも兼ねている色々と大変だ
生島コーチに4人の録画の準備を頼んだ
「じゃ予約の4人は来い」
周りから"いいなー""なぜ俺じゃ無いんだ"といった声が聞こえる
もちろんこれは仕込みであるが、ん、、何故真島は血を流しそうに悔しがってるんだ演戯にも程があるぞ
4人には真っすぐなパスとシュート、ドリブルと守備をある程度録画させてもらった
「明日の夕方またな」
そう言ってスタッフと選手と別れた
生島コーチに4人の特徴と名前を教えて貰った
************
FW 茂野 伸浩(28)ポストプレイから全般のマルチプレイヤー
FW 中馬 直登(25)前からのプレスと裏どりが得意
AMF 森園 恵輔(26)テクニシャンで視野が広い
DMF 佐治 慧(27)猟犬タイプのDMF
************
俺は翌日の夕方大体のシュート方法を教えた
「昨日走る時のピッチを奴らに教えてもらえたか? 」
「はい」
「その時に軸足と反対側の足が自然と前に出たと思うがどうだ? 」
復習も兼ねてもう一度おさらいしよう
・立ち位置は肩幅に水平達足の裏の3カ所"親指の付け根" "小指の下の外側" "踵" を左右でバランス良く立つ
・そこから段々と前傾にして体重を掛け限界で出た足の位置が軸足のステップ幅となるが、その時に自然と前に右足がでる
・ステップ幅よりやや前の位置に置いて自然と出た足に体重を掛ける
・踵を大きく振り上げれば振り子の原理で、シュートは強くなるが読まれやすく、フォロースイングが大きいとドライブが掛かりやすい
・シュートを打つ時は"バン"と弾くように撃つ
・ボールの位置が前になればドライブ回転へ下げれば無回転に近づく
・相手のキーパーが動いた時に腰を入れると逆に撃てるし、腰を抜くと巻ける
「これがインフロントシュートだやってみるか? と思ったがシュートフォームを崩したくないので予選後に各自で練習してくれ」
「はい」
「茂野は、フォームが割と理想に近かった、他3人は腰を使い過ぎている気がするな、まぁおいおい指導する」
「はい」
やけに従順で怖いくらいだ
「あと足元深くにボールが入り過ぎるとボールが浮くのはわかるな。これを無理に撃とうとすると宇宙へ飛んでいく」
「これをクライフターンでキックフェイント入れながら逆方向にトラップして逆足のアウトで直ぐ打つ」
「なんてのもいいし、足元深くに来過ぎたらターンしてドリブルゴールでもなんでもいい。無理しないのがいいと思ってる。やり易いのを選んでみてくれ」
ついでにクライフターンについて説明した
・一般的に使われるのはキックフェイントで振った足を使って軸足の裏を通すこれがAパターン
・軸足にする予定の足でキックフェイントをいれて空振りをし、ボールの奥に軸足を置き残った足でターンをするのがBパターンだ
「まぁ適当にだ、使うんなら自分の意思で使え俺のせいにはするなよ絶対にな」
そう言った瞬間に全員に笑顔が浮かんでいたので、上手く乗せる事が出来た様だ
モチベーターのいうのも大変だ
小声で「たま膨れるな俺がモチベーターで試合毎にスタメン変えるの知ってるだろ」
子犬の様な表情の"たま"にしっぽを振られてもどうしようもできない
翌日のミューティングまで戦術を考えるのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます