第2話 山田一(19)のインタビュー
山田一(19)------
スペイン1部リーグで2桁得点と2桁アシストを2年連続で達成したオールラウンダーである。
来年のシーズンは上位クラブへの移籍が噂されている。
雨が降るスペインのマズルカ競技場の芝生内にカメラと数人のスタッフが佇んでいた。
「現場リポーターの矢内さん。聞こえますか」
そう切り出したのはニュース22時のニュースキャスターの佐藤のぞみである。
「お待たせしました。こちら現地の矢内です。佐藤さん中継は繋がってますか」
可愛い笑顔で喋る20代前半であろう女性が、今人気赤丸急上昇中の矢内アナウンサーだ。
「はい繋がってます。それでは、オリンピック直前スペシャルゲスト山田一さんをお迎えしてお伝えしたいと思います」
そう言った瞬間にカメラは切り替えられ、若い青少年を思わせるスポーツ刈りの男が出ていた。
「では、今シーズン得点ランキング10位14得点と好調の山田さん今年一杯を振り返ってみて如何でしょう」
カメラを向けて更に笑顔を振りまいている矢内アナウンサー
「んーそうですね。今年はフォームが直ってなくて先生にそんなんじゃ、40得点とれないと言われて得点力不足を実感しました」
やっと話始めた山田一は表情が硬く真面目な印象を受ける。
揚げ足を取られて格好になってしまったので、佐藤のぞみはオリンピックへ話題を変更する
「オリンピック予選苦戦しましたが、見事予選通過です。反省点とかありますでしょうか」
んーと考える素振りを見せた後ようやく話を続けた。
「反省点っていうと、俺とたまちゃんは意思が通じてるんだけど、他のメンバーとはコンビネーションが上手く合わない感じでした」
「それでは、視聴者の皆様に今までの予選の模様をVTRでまとめてお送りします」
VTRに切り替わった瞬間に佐藤のぞみが矢内アナウンサーに噛みついた。
「ちょっと矢内さん打ち合わせと食い違ってきているんだけど、どういう事かしら」
身内を攻める事で他人を攻める。つまりは矢内アナウンサーに文句を言っているが実情はゲストである山田一を攻めているのだ
言い争いの中VTRが競技場のカメラにも流れていたその姿は得点をきめている
"矢口 球(やぐちたま)19" の姿だった。
「山田さん。すみません。次からは過去開示という事でいわゆる先生について話して欲しいんですが、よろしいでしょうか」
困り切った顔で山田を見つめる矢内アナウンサーに"いいですよ"と軽く回答していた
「では中継に戻ります。山田さん先生というのは今話題の鳴海先生の事でしょうか」
インタビューを出来るだけYESのNoに割り当てして余計な事は喋らせない方針の様だ
「はいそうです」
「今国内では鳴海先生をU23監督にと要望が高いようですが山田さんもそうですか」
「はいそうですね」
「先程おっしゃったたまちゃんというのはU23でFWを組んでいる矢口 球さんですか」
「はいそうです」
「お二人とも鳴海先生の教え子でいらっしゃいますが、どの辺の指導が素晴らしいですかね」
ん~~~、山田は考え込んだ質問が曖昧で難しかったのだ。
先生の指導の良い所ってなんろう?
まずは走るフォームのチェックだろうか。上体がぶれない様に頭を固定して目線を前に胸を持ち上げる感じで走る。
普通はサッカー選手はボールを持った時に重心を落として走る人が多い。そうなるとスライドが小さくなり、走るスピードが遅くなる。
・フォームチェック
・走り方の指導
・体の当て方
・怪我をしないためのトレーニング
・体力の作り方か
一杯あり過ぎて直ぐには答えられそうもないので、愚直に答えた。
「フォームチェックとか色々多すぎて答えられそうもありません」
「ありがとうございます。それでは今後のオリンピック代表サポータに一言お願いします」
「応援いつもありがとうございます。本選でもがんばりますので、よろしくお願いします」
ありがとうございました。そう言ってクルーは引き揚げていった。
ものの2分足らずの映像だ、何をしに来たのだろう。きっと観光だろうな
そう思いながらさっきの質問を思い出してみた。
そういえば、先生に会うまで俺はアスリートじゃなかった。
100mを16秒で走るドン亀だった。フォームを修正されトレーニングして初めて今の快速ストライカーの地位がある。
トップスピードで走りながらボールを蹴る。それは先生に何度も繰り返し"スピードを落としたらお前は終わりだ"と怒られた点だ。
トップスピードで走りトラップが大きくなっても方向は正確に、動いてるボールを予測し半眼で捉えてシュートを撃つ。
ふっと初心に返れた気がした。きっと明日は点が取れるだろう。見方の選手から早い正確なパスさえ来れば
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