第330話 先を見る緑の瞳
俺は、他の人と挨拶している先導者を少し待って、それから挨拶した。
素晴らしい経験をありがとうございました。
俺は、こんな機会はまたとないから、と一歩近づき、最も親しい人のような気持ちで、軽くハグをした。
波長が、まるで、大地のような気がする。こういう人だから、こういう時間が可能になる。俺は、深い緑の瞳を見つめた。彼のワークショップを受けるのは二度目で、その時は気づかなかった。
まるで光が静かにきらめくような、乱反射するような緑の深い瞳は、むしろ黄緑がかって見えた。こんな不思議な色の瞳を俺は見たことがない。
俺がお礼を言ったら、先導者は「君、去年も来ていただろう?」と言った。俺は「はい」と言い、それから名刺を探そうと一瞬思ったが、既に渡していたかもしれない。それより何より、名刺など要らない。何故なら、そんなものなくとも、テレパシーが可能であるから。必要であれば、どうとでもコンタクトできる。俺には自信があった。こういう人たちは皆同じだ。連絡先など要らない。必ず必要な時に会うことになる。
俺は、まるでどこか昼間のような、その緑の瞳の記憶を思い出そうとした。俺が死ぬ間際、見た、あの緑の夕焼けのような、最期の日のような色だ。
わからないとは思ったが、わかる必要もないと知っていた。全ての過去生の記憶は、結局は幻想だ。俺はそのことをよく知っているのに、まだこの世界に遊んでいた。だが、俺はやっと、男と女、両方を円にした。これで、次のステップに進むことが可能になった。
昨年、彼に俺が感動を伝えたこういう最後の挨拶の時、彼はちょっと戸惑った感じがした。それは、俺があまりに具体的に、何か言おうとしたからであって、俺は知っていた。イリュージョンの細かい内容を、伝えられても共有はしにくいこと。そしてまるで悪魔に魅せられたように、その段階で止まることは成長の停止を意味すること。
だから俺、今年はもう何も言わなくていい気がした。まだ旅は終わらない。俺は先を行くだけだ。
Bが先導者と握手をして、挨拶して、それから俺たちは、この部屋を出た。
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