第294話 もっと読書しろ、原書。

 実は俺は、昔からすごい読書量だったが、海外に出てから、日本書籍とはさっぱり縁が切れたままだった。俺は、大きな書店の本棚をかたっぱしから漁って読んだり、図書館もう行かなくて良い、と思うくらいに、そこにある本を全部読み流すのが好きだった。実はそれは、オートモードのような速読なので、それができなくて情報に取り残された状態ということに、徐々に我慢がならないと感じていたことに気づき始めていた。世間とのズレが生じてきて、俺が持っていた知識が古くなる。今やテレビでみんなが知るような一般的なところまで降りてきているから、俺の喋ることが全然面白くない。みんなも知ってることしか知らないというのは、海外に出てから時間が止まったままだからだ。海外で同じように情報を求め続けていたらよかったのに、俺のした努力は、全く明後日の方向を向いていた。そのことに気づいた俺は、今年になってから、Bの洋書の本棚を仕方なく漁り始めた。このままじゃ知識が古くなりすぎて意味ないが、日本語環境が少なすぎるから、海外情報を直接入れるしか道がない。


 幸い英語ならなんとかなるし、俺は、現地語も読むだけなら読めることに気づいて驚いた。中身を正確に読むには辞書を引かねばならないが、今はアプリで写真を撮れば、勝手に辞書の意味が出てくる。わからない単語は地道にそれを繰り返すしかないな。幸い、現地語も話せないだけで、大体の意味はもうわかるようになっていた、ここまでくるのにどれくらいかかってるんだよと俺は呆れたが、勉強する気が無かったのだから仕方ない。何より使う機会がなかったのだから。


 俺は、インターネットがあるからまあいい、と長い間信じていたが、今ここにきて、専門的な内容の書籍が全く読めてなかった空白の期間について、気分の悪い思いでいた。自分の頭が、本当にインターネットに合わせてバカになったような気持ちでいっぱいだった。頭の中身を一掃しないと。新しいことが覚えられないと真剣に悩んでいたが、悩んでる場合じゃない。古い要らない記憶を切ってでも、もっと未来につながる面白い情報を頭に入れて分析方法を変えねばならないだろう。俺がこの件から学んだのは、古い思考回路で固まったまま死んでも、またどうせ一からやり直しの事実だった。だったら生きてるうちに、新しいソフトやアプリを使いこなして、脳の中身をバージョンアップさせて、体に新しい動きを覚えさせて死んだ方が得だ。


 俺はすでに気づいていたが、輪廻を繰り返して、まるっきり全てが白紙になるわけじゃなかった。昔に鍛錬して、得意になったことは実はそのまま残る。だから、なんか知らないけど得意なんだよ、とか、器用なんだよ、とかいうことは、才能とか、そういうんじゃない。単に昔取った杵柄、ってやつ。


 だから幼い頃に、なんでこいつこんなに大人なんだろう、っていうような奴も、結局、前の記憶を無意識にそこで土台として使っているというのがあった。魂のレベルというのは、引き継ぐ。だから、身に覚えのないようなトラウマにも実はちゃんとした理由があった。過去生での体験が、無意識に刻み込まれていて、それが勝手に影響を与えている。


 俺は諦めてせめて来世に向けてでもいいから努力しようと思い始めた。医者は間に合わないが、次回は必ずトライできる。数学や物理、科学が、なぜ必要なのか今回でよくわかった。面白い人生を生きるには、能力がない状態だと楽しくない。能力を上げるには、地道に努力するしかない。大事なところだけをかいつまんで努力することに俺は否定的だった今世だったが、そうでもしないと、何度生まれ変わっても退屈な知識層と無駄な時間を過ごさねばならない。意味なく楽しいということも大事かもしれないが、それだけじゃ世界が限定されすぎる。


 やはり自分が生きている世界に、どれだけ大きく関与するのか、その面白さは今世では全く感じられないポジションにいるから余計にわかる。最初、それができると信じていたが、簡単に健康を害した。案外、健康というのは、失うまではその存在について一切、深く考えないものだ。俺は、肉体の鍛錬に否定的だった今世だったが、それは俺が怠け者だったからだと気がついていた。


 体の鍛錬がここまで大事と知っていたら、もっと節制し、運動も必ずセットの生活を選んだはずだった。俺がなぜ怠け者だったのか、そのことについては、自分のキャパと関係があった。俺の能力、キャパシティは、案外簡単に限界を示していた。その理由だったが、最初から「あなたにはできない」と言われて育てられたことが大きかった。そんな簡単な親から受ける自己暗示で、こんなに小さく育つわけだ。俺は驚いたが、「俺は何でもできる」と思って育つのと、常に限界を示されながら窮屈に檻の中にいるのとでは、ここまで結果が違ってきて、その枠を超えて、枠がなくなったから、まるで無尽蔵の資源みたいに突然、全てを変えても、破綻が来るのだということについて、やはり毎日、コツコツと無理なくじゃないと、いきなりに防波堤が壊れるみたいな状態は、結局、全てを破壊するのだと思わざるを得ない結果だった。



2019年 4月4日


 昨日、こっちに一時的に住んでる高校の医者になった友人が携帯メッセを送ってきた。何が言いたいのかわからないような単なる近況報告だったが、俺はつくづくダメだと思った。夕方6時なのに、まだ朝飯食ってない。何だよそれ、と言われたが、食べるのを忘れていた。毎日そんなだから、Bが帰ってきて慌てて飯作って、そこからまた朝までやるから、食べるのも寝るのも、めちゃくちゃなリズムできちんと規則正しい。


 痛みはほぼ消えていても、体に良いわけがなく、俺は電話を受けた時、実は取材のつもりで外にいた。あ、実はこれ、この件だけリアルタイムで書いてるが、(日付入れた。もうややこしいから)、このアテナイの中だと2ヶ月前くらいのエピソードの場所に挿入してしまってる。俺ほんとダメだなあ、と思ったが、本人は必死だから仕方ない。もうわけわからない最近だ。


 時系列がむちゃくちゃの小説はコンテストに通らない。これ、本当は「カクヨム砂漠」に書くべき内容なんだが、更新忘れてる。


 並行して何本も色んなジャンルを同時に書いていたら、偶然、前のクライアントが仕事をくれて、それが2人も続いて、他にもやっていることがあって、頭がうまく働いてない。スコーンと何か大事なことを忘れそうな。


 いやほんと、頭ってキャパ超えたらおかしくなる。そんな気がする。


 俺ね、昨日、近況ノートに阿瀬みちさんと神原さんがコメントくれてたのに気づいてコメント返したんだけど、いや絶対、今、頭おかしい。


 昨日のことちょっと書く。


「あの、ちょっと遠すぎますから、もうちょっと近くに座ってください」


 俺ね、本当に好きな人には近づけないんだわ。好きでない人にはビズしたりハグしたりするくせにね。わかんないわー自分が。


 もう挙動不審過ぎて、彼女が笑ってたわ。あまりにもぎこちないから。


何だろうね、これって差別的。何で好きな人の前ではこんなに心臓がバクバクするのか、走ってきたから、とかじゃないと思うんだわ。


 Bに言われた話、したっけ?


「お前、今、何書いてんだ?またセックス描写について?」


 いや、アテナイはセックスないよ。だって俺とお前と隣のゲイの爺さんだよ。どこにセックス出てくるんだよ。


 俺、今、社会学的な考察を別で書いてるんだよ。いつもいつも桃色な頭じゃないから。いつもそうだと退屈だろ。セックスなんてすぐ飽きるんだよ。何か真面目な分析を書いたら、コピー屋ででも製本して、ネットに関係ないところで読んでもらってクリティークもらいたい。大学の教授が「市井にいても追窮できる」と言っていた通りだと思うから。


 俺、その舌の根も乾かぬうちに、何だよ、このシュチュエーションは。


 しかも俺、他に好きな人がいたはずなんじゃなかったのか。ほぼ振られたにせよ。それ書いてない。俺、空港まで追いかけたって話。近況ノートに書いたかもしれないけど、消した気がする。なんだろう、その火が消えてないから今みたいになってる気がする。結局、恋愛なんて錯覚なんだよ。対象に都合の良い理想を投影してるだけで。


 実は二人はそっくりなんだ。俺ダメだね、好みがはっきりしすぎてて。


 丸顔でスタイルが何とも言えない綺麗で、長い金髪で、ちょっと真面目そうなんだよ。処女かな?まさかな。


 まさかなあ。


あ、これも差別的?


 もう心臓バクバクしました。しばらく会いたくないです。1ヶ月ぐらい。Bにはまだ悟られてないのは、言ってないんだよ。言ってないせい。また冷やかされるから。絶対言わない。


 でも多分、真面目そうに見えて男と住んでる。かもしれない。多分ね。こっちの人でこんなに綺麗なら、誰もほっとかないだろ。喋っても、もっとツンとしてるのかと思ったけど、全然そうじゃないところが、ちょっとがっかりした。


 俺ね、小説の中のように、何も個人的なこと話したくないし聞きたくないけど、どこに住んでるか、何歳か、名前だけ聞いた。本当は聞かずともいいんだけど、最低限のことだけ聞いた。不思議なんだけど、何も知りたくない。


 いや、もっとよそよそしくていいよ。俺、よそよそしいくらいの女の方が好みだから。


 そんな馬鹿なことを思いながら、俺は突然に風俗を利用する奴の気持ちがわかった気がしたな。それって不思議だろ?俺も不思議。いや、だから今、俺は頭がおかしい。これね、きっとJさんならわかってくれるわ。Jさんマッサージマニアだから。いや、相手がここまで自分の好みというだけで、ここまで世界180度変わるとか、単純じゃねえ?


 やっぱり、好きで好きで好きな人を振られてもいいから、ちゃんと見つけてぶつかってみるべきかねえ。こんな俺が、久しぶりにそんなことを考えた。それって何かわかんないんだが、「そこまで好きな人とずっと一緒にいるとか考えられないし、気を遣うから遠くから見てるだけでいい」みたいな感じなんだよ。


 結局、ほっといても「そこまで好きじゃない人」には事欠かないわけで、それね、すごい失礼なことなんだよ、だから結局、そういうのは「なし」じゃないと、と言って、孤独になるんだよね。そこまで好きじゃない人の方が気軽に付き合える。だからと言って、友人以上はやはり、それは、俺は嫌だね。踏み込む間合いのようなものが、俺は友人とは絶対そんなことしない。友人と決めたら、彼女に昇格することは未来永劫ないから。


 結局、相手に恋愛感情があれば、友達にはなり得ないから。ドア閉めて鍵かけて、ややこしいことは全部排除したら、今みたいになる。


 好きじゃない人にモテても、本当に意味ないから。



なんか、100かゼロみたいな極端さだと自分で思った。本当に好きな子の前では、カッコ悪くなるんだわ〜。近くに居たくない。俺、前はこんなじゃなかったと思うんだけど、兄貴が移ったのかな。余裕ないわ、今。


 あんまりそそる冷たい感じに、後ろからふるいつきたくなる綺麗なスタイル、バージンみたいな素朴さだから、ネタに使わせてもらって、ほぼ一本書き上げたんだけど、本物の目の前のこの子の方が多分ずっとチャーミングだという気がした。


 ちなみに、会ったのは二度目、話したのは初めて。最初にこんな風に話してたら、ここまでドキドキしていない。やはり、話すと普通の子なんだよ。


 小説の中じゃ、ほぼ最後まで冷たいのが突然にひっくり返るから。やはり俺はツンデレに弱いのか。


 でも生身のチャーミングな子だと、一度も話さなかった時に、そこまで気分が盛り上がったのと比べ、今は「友人」という気持ちに傾くから不思議だ。

距離がないとダメなんだなと思う。こうなる前に、一気に描き切って正解だ。


 現実のセックスより、正直、俺こっちに住んでる方が自然、っていうくらいアクロバティック。いや俺は綺麗じゃないからAVは見ない主義。やはりね、多分絶対的に、セックスはスポーツと同じカテゴリーだよ。そう思うね。


 村上春樹の初期の描写、よく覚えてるけど、あんなのセックスじゃないよ。いや、違うと思う。なんだよこの淡々とした空気。


 つまんないぜー


 でも、遊びでそういうことするのが嫌で、相手も遊びでそういうことをしそうな人は絶対に選ばない以上は、ほんと、機会に恵まれない。というか、絶食じゃね?これはほんと、まずい気がする。


 だから床屋のハンドマッサージのサービス程度で、こんな真っ白になるんだよ!相手が「めちゃめちゃに一目惚れレベルに好みな女だった」というだけで。ありえない。


 徒然に書いたが、「お前、くだらないこと書いて徹夜続きで体壊すとかアホだぞ」と友人は言わなかったが、きっともし俺が書いてる内容を知ったら、そう思うに違いない。いやほんとね、俺の97パーセントは「くだらないこと」でできてる気がするわ。また馬鹿なこと書いて、遅刻する気か!








 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る